世界遺産登録に難クセ 「佐渡金山」を突破口に「日本統治不法論」を認めさせたい韓国

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尹錫悦政権下でどんどん「賠償判決」

――韓国政府が負担する、との約束ではなかったのですか?

鈴置:岸田首相はそのつもりだったようです。でも、それでは韓国の目的は達成できない。まずは第三者弁済方式に日本政府を引き込む。次は日本企業に出資させる。それをテコに日本政府に「不法な植民地支配」を認めさせる――のが韓国の作戦です。

 そもそも財団の名称は「日帝強制動員被害者支援財団」。名前からして「非合法な併合下での不法な動員」を主張する組織なのです。

 尹錫悦大統領が「植民地支配不法論」の支持者である最大の証拠は最高裁長官人事です。「徴用工」判決を推進した金命洙(キム・ミョンス)氏が2023年9月に任期を終えた後、新たな長官には曺喜大(チョ・ヒデ)元最高裁判事を指名しました。

「徴用工」が外交問題化したのは2018年10月に最高裁が新日鉄住金(現・日本製鉄)に賠償を支払うよう命じたことがきっかけです。曺喜大氏はその裁判の12人の裁判官の1人であり、支払い命令に「賛成」した10人のうちの1人でした。

 朝鮮日報の司法記者、パン・グ二ョル氏は「[記者手帳]『ミスター少数意見』曺喜大候補者、徴用合議での判断は今も同じか」(2023年11月11日、韓国語版)で日韓関係の悪化はこの判決が一因と指摘したうえで、曺喜大次期長官が新たな火種になる可能性があると指摘しました。

「植民地支配不法論」の長官の下、最高裁は遠慮なく日本企業に賠償判決を下すであろう、との予想からです。実際、そうなりました。2023年12月に発足した曺喜大体制の下で、最高裁は日本企業に対し賠償金を支払うよう命じ続けています。

 最高裁は2024年2月20日までに「徴用工」裁判で敗訴した日立造船の供託金を原告に渡しました。日本企業初の被害です。だが、日本政府は「被害が出れば報復する」との事前の警告を一切、実行しませんでした。

『でっちあげの徴用工問題』

 麗澤大学の西岡力・特任教授が書いた『増補新版 でっちあげの徴用工問題』(草思社文庫、2022年10月発行)によると、「徴用工」で訴えられている日本企業は78社で、原告は1287人(「第4章 日韓関係を悪化させる日本人たち」参照)。最高裁は新日鉄住金を皮きりに1人あたり約1000万円の「賠償」判決を着々と下しています。

 78社以外にも韓国政府は「日帝強制動員現存企業299社リスト」を作成しました。国立博物館「日帝強制動員現存企業」の展示から西岡特任教授らが数えたところ275社あったそうです。訴訟対象予備軍です。「第5章 日本企業を守れ」に企業リストが載っています。

 左派政権のように露骨な反日ではないだけに、尹錫悦政権の罠は見落としがちです。騙しのテクニックが狡猾な分、タチが悪い。

――「徴用工」裁判は奥深いのですね。

鈴置:2018年10月30日の韓国・最高裁判所判決は一部の人が誤解しているように「賃金の未払い」問題を扱ったものではありません。

「不法な植民地支配の下、日本企業で過酷な労働に従事させられた精神的苦痛に対する慰謝料を支払え」が判決骨子です。もし、慰謝料を支払えば日本企業、さらには日本政府も「不法な植民地支配」を認めたことになっていく、というのはすでに説明した通りです。

 日本政府は国交正常化の際などに植民地支配を謝っていますが、法的には正規の手続きを経た併合だったとの立場を守っています。これを突き崩すため韓国人は国を挙げて日本に揺さぶりをかけているのです。

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