世界遺産登録に難クセ 「佐渡金山」を突破口に「日本統治不法論」を認めさせたい韓国
韓国大使を信じた朝日記者
韓国の尹徳敏(ユン・ドクミン)駐日大使は2024年4月4日、新潟県の花角英世知事を表敬訪問しました。その後、新潟の記者に対し「佐渡」の世界文化遺産登録に関し「マイナスの歴史もある。全体の歴史を表示できる形でやる必要があるのではないか。絶対反対ということではない」と述べています。
要は新潟まで行って、朝鮮人強制労働を認めないと登録に反対すると脅したのです。花角知事は尹徳敏大使に対し「政府間で議論して欲しい」と答え、相手にしませんでした。
だが、地元記者の一部は大使の主張を素直に信じたようです。4月10日の花角知事との会見で「知事の不誠実さ」を責めました。新潟県のホームページによると以下です。
・尹大使の仰る、戦時中にたくさんの韓国からの労働者たちが、厳しい環境の中で意思に反して動員された、労働したという、そのことについて、県としてはどういう認識であるのか。史実について…。(新潟日報)
・尹大使としては、新潟県にさらに一層の何か協力を求めたと我々受け取ったのですけれども、少しやや冷たいような気もしたのですが、地元としてさらに…。(朝日新聞)
・何となくですけれども、尹大使がこの時期に新潟県と佐渡市を訪ねたことは、無駄足になってしまっている…。(朝日新聞)
尹徳敏大使の「活躍」というか「暗躍」はなかなかのものです。2023年9月27日、東京での講演で「日本からの解放80年になる2025年に新たな未来に向けての宣言が必要だ」と日本人に訴えました。
「フランスとドイツの和解・友好の礎となった1963年のエリゼ条約(仏独協力条約)に準ずる」宣言と説明しています。「韓日も仏独のように戦争していた」ことが前提の宣言を通じ「1910年から1945年までは独立国同士の戦争だった」――つまり「植民地ではなかった」と日本政府に認めさせる罠です。
文在寅より巧妙な尹錫悦
――尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は日本との関係改善を目指している……のでは?
鈴置:尹錫悦政権は米国とのヨリを戻すため、日本との関係改善に取り組むフリはします。ただ、「植民地支配不法論」を支持する点では前の文在寅(ムン・ジェイン)政権と同じです。それどころか日本にそれを認めさせる巧妙な罠を仕掛けました。
「徴用工」裁判の解決策として、原告へは韓国政府傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」が判決金相当額を支払う――という第三者弁済案を打ち出したのです。
第三者弁済は法的には日本企業に支払い義務があるとの認識が前提にあり、とりあえず第三者が代わって支払うということに過ぎません。
しかし、これに乗った岸田政権は「韓国の最高裁判決は国際法違反である」との抗議を棚上げしてしまった。日本企業に賠償金を支払えと命じた「徴用工」判決の正当性に日本も同意した証拠として韓国側は利用していくでしょう。
さらなる罠が「求償権」です。第三者弁済という法的枠組みでは、財団は肩代りした分のおカネを日本企業に要求する権利――求償権を得ます。
2023年3月16日の記者会見で岸田首相は「[財団による]求償権の行使は想定していないと承知している」と述べました。日本に損はないと強調したつもりでしょうが、求償権の存在を否定しなかったことにより「本質的には日本側に支払い義務がある」ことを、ここでも暗黙裡に認めてしまったのです。
「カネを払え」の大合唱
韓国の日本専門家、李元徳(イ・ウォンドク)国民大学教授は東京新聞を通じ「求償権を行使されたくなければ、日本側は財団にカネを出せ」と要求しました。「元徴用工問題 韓国側が賠償肩代わりへ 岸田首相が解決策評価 月内にも日韓首脳会談」(2023年3月6日)である。
・賠償を肩代わりした財団が被告企業に対して持つ「求償権」が火種として残る可能性がある。日米韓協力を外交目標とする尹政権の間は求償権を行使する心配はないが、政権交代があればその保証はない。ただ、基金[財団]に参加すれば求償権行使の大義名分はなくなる。
求償権の存在が前提の主張です。第三者弁済は日韓関係改善のために韓国が後退したと見せかけて、「植民地支配不法論」を日本に認めさせるための手の込んだ罠なのです。
李元徳教授だけではありません。尹錫悦政権の外交部長官ら外交関係者と財団の理事長は「日本はカネを払え」と合唱しています。大統領自身も2024年2月7日に放送されたKBSとのインタビューで「徴用工」問題に関し「韓日関係の改善を願う両国企業人の協力」を訴えた。要は日本企業も財団に出資せよ、と要求したのです。
共同通信の「尹大統領『日韓企業が協力を』 元徴用工問題解決目指し」(2024年2月7日)で読めます。
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