「父の修被告は措置を講じず機を逸し続けた」 ススキノ首狩り殺人、瑠奈被告の暴走はなぜ止められなかったのか

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 昨年7月、札幌ススキノのホテルで男性会社員(享年62)が殺害され、頭部を切断された事件。今月4日、起訴された親子三人のうち、まずは母親の田村浩子被告(61)の初公判が開かれた。そこで明らかになった主犯で娘の田村瑠奈被告(30)の想像を絶する異常性について、精神科医と臨床心理士が分析する。

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 50席しかない傍聴席に対して357人の傍聴希望者が押しかけ、約7倍という高倍率を記録した浩子被告の初公判。傍聴したさる人物はこう語る。

「浩子被告が問われているのは死体遺棄ほう助などの従属的な罪ですが、事件における初めての公判だっただけに、いくつもの衝撃的な話が飛び出しました」

 たとえば、検察側の冒頭陳述によれば、

「瑠奈被告は被害男性の頭部を自宅に持ち帰ってきて、眼球や舌などを摘出したり、皮膚をはぎ取ったりしていたそうです。また、彼女は殺人ほう助などの罪に問われている父親の田村修被告(60)に、自身が眼球をくり抜く様子を動画で撮影させていたのだとか」(同)

 弁護側の冒頭陳述によると、瑠奈被告は父親を“ドライバーさん”と呼び、両親をパシリとして使い倒していたという。片や両親は彼女を“お嬢さん”と呼び、普段から敬語で接して機嫌を取っていたそうだ。

「ズルズルと機を逸し続け…」

 瑠奈被告は他者をいたぶり、かつ、支配することで快感を得る性質を持っていると思われるが、それに加え、精神科医の片田珠美氏の分析では、

「『ゲミュートローゼ』、つまり、他者の痛みや苦しみに同情できない情性欠如者でもあると思われます。この両方が合わさって、とてつもない残虐な行為に手を染めるに至ったのではないでしょうか」

 父親の修被告が精神科医だったことについては、

「彼はどこかで娘の要求に“もうこれ以上は応えられない”と、歯止めをかけるべきでした。患者の話に耳を傾け、気持ちに寄り添う精神科医は、その一方で『リミットセッティング』といって許容できる限界を明確に設定するのも仕事のうちなのですが……」(同)

 とはいえ、客観性が担保できないので、精神科医が家族を診ることはタブーのようだが、

「直接、修被告が診察するのではなく、その前の段階で瑠奈被告の異常に気付いて病院に入れたり、家庭内でのリミットセッティングを決めたりと、講じられる措置があったはずです。しかし、彼女が恐ろしかったからなのか、ズルズルと機を逸し続け、取り返しのつかない結果を招いてしまったのでしょう」(同)

 次回の公判は7月1日。今はまだ、瑠奈被告が抱える底知れぬ闇の一端が、明らかになったばかりだ。

週刊新潮 2024年6月20日号掲載

ワイド特集「梅雨前線北上中」より

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