ほぼ無名、大した実績もなし、身の程知らず…石丸伸二氏に批判的な言説はなぜ炎上するのか【都知事選】

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“正義の鉄槌”という評価

 現代ビジネスが6月6日と7日、石丸氏に批判的な記事を配信すると(註)支持者の可能性が高いと思われるネットユーザーから「偏向報道」などの批判が相次いだ。

 偏向報道との指摘が正しいかどうかはともかく、石丸氏に熱烈な支持者が存在することが改めて浮き彫りになった。なぜ、これほどの支持を得ているのか、ITジャーナリストの井上トシユキ氏に取材を依頼した。

「大前提として小池さんも蓮舫さんも支持したくないという都内の有権者が相当数に達しており、その上で『老害』というキーワードが重要だと思います。そもそも石丸さんがネット上で注目を集めたのは、『地方都市で既得権益を独占し、利潤を吸い上げている老害』の存在を明るみにし、彼らに正義の鉄槌を下した──と理解されているからです。こうした老害は全国各地に存在しますから、単なる広島県内の話ではないと受けとめられました。結果として全国のネット民から広範な支持を得るようになったわけです」

 安芸高田市長選で石丸氏が獲得した票数は約8000票。得票率は約6割に達したが、組織的な支援は皆無。市議会とは当初から対立的な関係を余儀なくされ、いつリコール運動が起きても不思議ではない状況だった。

トランプとの違い

「そこで石丸氏は議会のネット中継を実施するのですが、これで流れが変わります。議会を牛耳る老害市議の存在を明るみに出し、多くの人の関心を集めたのです。一部のメディアは『トランプ流の敵を作って支持を集める政治手法』と批判しましたが、これは的外れでしょう。ドナルド・トランプ氏は今も権力を手中に収めようと“敵”を作って攻撃していますが、石丸氏は『安芸高田市をよくしたい』と純粋に考えていただけだと思います。むしろネット上では“地方都市におけるカースト制”が指摘されており、こちらのほうが正確な状況把握ではないでしょうか」(同・井上氏)

 地方都市から東京などの大都市に出る若者の中には、大学進学が理由という者も少なくない。まさに石丸氏がその一人だ。一方、地元に残った人間で作られた“カースト制”では、勉学でも仕事でも何の努力もせず、地域の権益を独占するだけの“老害層”がカーストの最上位を占めている。

 京大を経てメガバンクに就職したエリートが、「故郷に恩返ししたい」と帰ってきた。こんな立派な新市長を、カーストの最上位を占める老害たちがいじめている。だから地方はダメなんだ──これが“地方都市カースト制”を巡るネット上の議論だ。

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