大学生ドラフト候補“豊作”の声も…「大学選手権」でスカウトの視察に生じていた“異変”

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ネット配信でチェックするケースも

 ただ、ほとんどの試合ではまだまだプロと比べるとデータが少ないことは確かだ。そのため、いわゆるスカウトではなく、データを分析するアナリストに近い立場の職員がデータ取得のために、アマチュアの現場に姿を見せている球団もある。

 回転数を測定している球団の担当に話を聞いたところ、確認できる限り現在そういった試みを行っているのは少なくとも3球団はあるという。このような流れは他の球団にも広がっていく可能性は高いだろう。

 また、近年では高校野球の地方大会や大学野球のリーグ戦、社会人野球の都市対抗予選など全国大会ではなくてもネット配信される試合は格段に増えており、現場に足を運ばなくても選手のプレーをチェックできるようになっている。

 特に、高校野球の夏の地方大会は炎天下で行われるため、あるスカウトは「春までに現場で見ておいて、夏は配信を見るようにしないと、体を壊しますよ」と冗談めかして話していた。

 球団によってはマークしている選手の配信映像を収集している担当を置いているケースもあるという。こうした点にも、スカウティングの変化が表れていると言えそうだ。

アナログな部分も重要

 ただ、いくら多くの映像とデータが収集できたからといって、それだけで獲得する選手を決められるわけではない。ベテランのスカウトはこう話す。

「昔に比べれば、試合の日程や選手の情報もネットで調べられるのでだいぶ楽になりましたよね。昔は、大会の日程を高野連や新聞社に電話をして、確認していましたから。でも、最終的には何度も実際にプレーを見ないことには判断できませんよね。アマチュアの選手は、プロの選手と比べて、プレーが安定していません。その日が好調なのか、不調なのか、成長しているのか、停滞しているのか、場合によっては悪くなっていることもある。自分が気になった選手は何度も見て、迷いながら最終的に推すかを決める。データや映像はあくまでもその一つの材料だと思います」

 実際にデータを収集している担当者も、アマチュア選手のスカウティングはハイテクだけでなく、アナログな部分も重要だと話していた。

 新人選手の獲得は、球団の補強の根幹にかかわるところであり、ドラフトの成功、失敗がその後のチーム成績に与える影響は極めて大きい。そして、人が人を見極めるほど難しいことはないのもまた事実だ。そんな中で、どの球団が「ハイテク」と「アナログ」を駆使して、成功をおさめることができるのだろうか。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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