大学生ドラフト候補“豊作”の声も…「大学選手権」でスカウトの視察に生じていた“異変”
例年は全スカウトが集合するが
全日本大学野球選手権が、6月10日から16日まで東京ドームと神宮球場で行われた。高校野球の甲子園大会、社会人野球の都市対抗と並んで、アマチュア野球の主要カテゴリーでは非常に大きな意味を持つ全国大会で、例年NPBはもちろんMLBのスカウトも多く視察に訪れている。昨年の大会では、常広羽也斗(青山学院大、広島1位)や下村海翔(同、阪神1位)が大活躍を見せて、ドラ1指名を勝ち取っている。
【写真】日本代表・井端監督に選ばれた4人のサムライ大学生の素顔(侍ジャパンの公式HPより)
しかし今年、大会前に“ある情報”をスカウトから聞いた。例年はどの球団も全スカウトが集結するのだが、今大会は、関東在住のスカウトのみが視察する球団があるというのだ。
その理由について以下のように話してくれた。
「今年の大学生はピッチャーなら金丸夢斗(関西大)、野手なら宗山塁(明治大・遊撃手)が目玉ですが、どちらもリーグ優勝を逃して、大学選手権に出場しません。出場選手の4年生で、上位指名が確実視されるのは、西川史礁(青山学院大・外野手)と渡部聖弥(大阪商業大・外野手)くらいですよね。それであれば、わざわざスカウト全員が揃ってまで見ることはないだろうという判断のようです。ただその代わり、(その球団は)4年生の有力選手が揃う大学日本代表については、国内の合宿のみならず、海外の大会にスカウトを派遣するみたいですよ」
開幕戦となった大阪商業大と中央学院大の試合は、前出の渡部が登場するということもあって、会場となった東京ドームのバックネット裏は多くのスカウトが顔を揃えていた一方、それ以外の試合は、例年に比べるとスカウト陣の数は少なかった。
「ハイスピードカメラ」を活用
また、昨年夏の甲子園でも、ドラフト候補と言えるような選手が登場しない日は1人もスカウトを派遣していない球団があった。筆者は、2023年08月21日に「デイリー新潮」で配信された記事<どうして?『夏の甲子園』を視察するスカウトが減っている理由 「一日、誰も来ていない球団があった」>で、そのことについて紹介している。
全国大会だからといってスカウト全員揃って視察するのではなく、有望選手がいないのであれば、他を優先することは、極めて合理的とも言えるだろう。
ここ数年、ドラフト候補を視察するプロのスカウト陣の様子に“ある変化”が見られている。
選手のプレーを撮影する時に、一般的なビデオカメラやスマートフォン、タブレットではなく、人間の目では知覚できない高速現象を撮影できる「ハイスピードカメラ」を用いているケースが見られるのだ。投手が投げるボールについてハイスピードカメラで撮影し、その映像から回転数などを算出することができるという。
NPB球団の本拠地球場であればどこもボールの回転数を計測できる機器が導入されており、これで収集したデータを分析して、戦術や編成に生かすのは一般的になっている。
アマチュアの現場でも、データ活用は進んでおり、社会人野球の都市対抗本選では、中継で回転数や打球速度などのトラッキングデータを紹介している。
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