早慶、青学だけではない…超人気「私立小学校」の実名 一般家庭にもチャンス到来「小学校受験」の意外な実情
「勉強をさせたい」
2013年に開学した慶應横浜初等部にも通ずることかもしれませんが、このような新設校の場合、小学校受験に新たに参入しながらも、伝統校特有の文化には抵抗を持つようなご家庭にとっては、子どもを入れやすいと考えている側面もあるのではないかと思われます。
加えて、農大稲花が7コマ授業を取り入れていたり、慶應横浜初等部が、慶應幼稚舎と違って土曜授業を行っていたりするように、「しっかり勉強させる」という点も、今の保護者の方々には魅力に映っているようです。その意味で、「大学受験に強い高校に進学できる小学校」の人気も上昇傾向にあるのですが、興味深いのは、「中学受験に強い小学校」の人気も高まっている点でしょうか。東京の宝仙学園、神奈川の洗足学園、埼玉ならさとえ学園も有名です。中学受験で再チャレンジができるということで魅力に感じられる方もいらっしゃるようです。もっとも、中学受験を避けようとして小学校受験に臨む方が多い中、小学校受験に成功してもまた中学校受験を控えるという状況にはなってしまうわけですが……。
英語教育が充実しているかどうかも、人気校の条件になりつつあります。例えば、24年度から「国際コース」を新設した昭和女子大学附属昭和小学校は一気に人気が高まりましたね。その意味ではインターナショナルスクールも人気が高まっているのだと思いますが、そちらは学費が年間3、400万円なんていう世界。それに比べたら私立小学校ならせいぜい100万円程度で済む、という考え方もあるわけです。もちろん、私学受験のためには教室に通うお金もかかるという側面もありますが、それを差し引いても、インターナショナルスクールよりはコスパが良いという見方もできるということでしょう。
ブランドよりコスパ
こうして考えると、伝統的なブランドだけではなく、コスパや実利の面で私立小学校が選ばれる時代になってきていると思います。主な保護者世代である30代が、ブランドよりもコスパなどの実利を重視する世代であるということもあるのかもしれません。不動産人気を見ても、「遠くの田園調布より近場の豊洲」という価値観が普及してきているのと同じ感覚で、ブランドにこだわりすぎず、教育の中身をしっかり見るご家庭が増えた印象はあります。これまでは出回る情報が少ない世界でしたが、SNSをはじめとして、以前よりは情報が出てくるようになってきているのも、そのような多様な価値観の後押しになっているかもしれません。学校側も、以前に比べると情報を公開して、透明化してきている傾向があるように感じます。
ですから、少なくとも、小学校受験が“代々の名家だけのもの”という感じではなくなってきているのは間違いないと思います。倍率がそこまで高くないような良い学校だってたくさんあります。今は選択肢も様々な時代ですから、少しでも興味をもたれる学校があるのなら、チャレンジしてみても良い世界だと思いますよ。
〈有料記事「難関校合格の保護者と個人教室の先生が明かす ベールに包まれた『小学校受験』のウラ」では、「志望校選び」や「教室選び」などの戦略の立て方のほか、元私立小教員が解説する「名門校の評価のポイント」、挫折を乗り越えて難関校に合格した漫画家一家のメソッドなど、小学校受験の実態と“勝ち筋”について詳報している〉