早慶、青学だけではない…超人気「私立小学校」の実名 一般家庭にもチャンス到来「小学校受験」の意外な実情

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 小学校受験が“代々の名家だけのもの”という時代は過ぎ去り、ごく一般的な家庭が挑戦する時代に突入した。実際の受験者数はどれくらいなのか、各校の倍率はどの程度なのか、どんな学校の人気が高まっているのか――。小学校受験のポータルサイト「お受験じょうほう」の運営者に、実情をきいた。(野倉学/株式会社バレクセル代表)

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昨今の傾向

 首都圏における小学校受験人気は、ここ数年上昇傾向にありました。中学受験の競争が熱を帯びてきたことで、それを避けるために小学校受験へ参入したり、コロナ禍などもあり、公立小学校の教育環境に不安を感じたことで私立小学校に興味を持たれたりするご家庭が増えたことが要因だと思われます。あるいは「子どもにはできるだけ多くチャンスを与えたい」というお考えも最近はよく耳にします。慶應に入学させたいと考えるなら、小学校からチャレンジした方がチャンスは増えるということですね。こうした背景が重なって、特にパワーカップルと呼ばれるような共働き層の参入が増え、コロナ禍前と比べて、1割から2割くらいは受験者が増加した印象です。

 これが直近の2024年度入学の入試(23年11月実施)では、減少に転じています。単純に少子化の影響もありますが、公立小学校の教育環境が充実してきたというのもあるのではないでしょうか。これからまた受験者数が増加に転じるというのは考えづらいので、小学校受験人気の過熱は、ひとまずピークアウトしたと見てよいかと思います。

 弊社の調べによると、2024年度入学の入試では東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県の出願者数はのべ2万5000人程度。平均して2、3校くらいを併願していることを考えると、実際に受験に臨む家庭数は8000~9000世帯程度と思われます。1都3県の小学校入学児童数は現在30万人弱ですから、そのうち小学校受験に臨む割合は、3%程度ではないかと見ています。

「早慶」だけでなく……

 こうしてみると、受験産業全体の中では必ずしも大きなマーケットとは言えないかもしれませんが、やはり誰もが知るような人気校は、かなりの高倍率となっています。24年度入学の試験時の倍率(志願者数から算出)をいくつか紹介すると、以下の通りです。

慶應義塾幼稚舎 10.6倍
慶應義塾横浜初等部 13.2倍
早稲田実業学校初等部 8.9倍
学習院初等科 9.3倍
青山学院初等部 6.5倍
東洋英和女学院小学部 11.7倍
東京女学館小学校 5.9倍

 特に早慶をはじめとした有名大学に附属している伝統校人気は根強いですね。

 その一方で、各ご家庭の価値観が多様化しているような傾向も見られます。一昔前なら、「慶應幼稚舎に行けなければ意味がない」なんて考え方をお持ちの方も少なくなかったのですが、今は家庭の方針に合うかどうか、あるいはしっかりと“実利”を見極めて受験校を選ぶご家庭が増えているように感じます。

 例えば、近年人気が急上昇しているのは、東京農業大学の附属校として2019年に開学した東京農業大学稲花(とうか)小学校。直近の倍率は9.8倍です。将来的に、大学受験に強い東京農業大学第一高校、いわゆる農大一高に進学できるというメリットに加え、英語教育を毎日取り入れていたり、食育を目的とした給食が提供されていたり、新設校ならではの取り組みが、多くのご家庭に刺さっているようです。

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