「さらし行為」の結果、不倫は解消、妻子とは別居中…「女性不信に陥った」39歳夫の告白

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幸せなときほど魔物はやってくる…

 3年後には娘が生まれた。夕子さんは産休と育休をとったが、そのときでさえ「あなたに経済的な負担をかけて申し訳ない」と言ったそうだ。「オレたちの子なんだから、水くさいことは言わないでほしい」と彼は思った。

「幸せでしたよ。あの時期は本当に幸せだった。夕子は何があっても僕を大事にしてくれると信じられたし、娘はかわいいし」

 ところが幸せなときほど魔物はやってくるものなのだろうか。自分が幸せだから、他にもそれを振り向けたくなるのだろうか。3年前のある日、彼は恋に落ちた。

「当時はコロナ禍で本当に大変でした。勤務先が閉店を余儀なくされたんですが、僕はたまたま拾ってくれる人がいた。チェーン店ではあったけど、味は店に任せられていたので、せっせとテイクアウトのお弁当や惣菜を作り続けていました。どうにか店内での飲食ができるようになったころ、グループ内の別の店に引き抜かれたんです。給料も上がったし、何より誰かに認められたことがうれしかった。そしてそのグループ本部に勤める事務方の女性と関係をもってしまったんです」

 仕事上、何度か顔を合わせているうちに食べ物の話になり、それが議論となった。智花さんというその女性は引かなかった。議論が紛糾してケンカになりそうになったとき、彼は何やら満足感を覚えたという。

「結局、味って個人差が大きいから、絶対的な味はないんだというところで落ち着いたんですが、食べ物や味について、これほど議論できる人がいることに感動してしまって。それがそのまま恋愛感情になったんです」

 言いたいことを言い合って、なぜかすがすがしい気持ちになった。妻の夕子さんとの間では感じたことのない満足感があった。

 結婚して子どもができても、夕子さんは英登さんに反論ひとつしたことがない。英登さんがストレスを抱えて、つい声を荒げても、夕子さんは「ごめんなさい」と言うばかり。ただでさえ八つ当たりして自己嫌悪に陥っているのにさらに謝られたら、罪悪感は増すばかりだ。言い返されたほうが気楽だった。

「だから夕子には、ついこちらも遠慮するようになっていました。でも智花には最初から遠慮なくケンカ腰になれた。智花も『まったくあなたみたいな強情な人には会ったことがないわ』と苦笑していました。それからすっかり意気投合して、2度目に会ったときには僕が智花のマンションに行ってしまったんです」

 電光石火の恋だった。3歳年上の智花さんは、英登さんが抱く「女性とはこういうもの」という理解を超えていた。英登さんが疲れていても労ったりしない。「仕事をしているのはみんな同じ。疲れたなんて口に出したら、よけい自分が疲れるだけ」「悩むより動け」と叱咤激励する。それは智花さんの信条でもあった。

【後編】では「泥棒猫」「あんた価値ないよ」とSNSで猛攻撃をはじめた夕子さんの「さらし行為」の実態に迫る

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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