早慶ダブル合格なら早大“優勢” 背景に共通テスト利用と国際化路線 それでも「私なら慶応を勧めます」というワケ

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求める学生が異なる

「将来、司法試験を目指すという東大文科1類現役合格の学生は『さすがに早稲田政経は落ちました』と苦笑いしていました。今や早稲田政経の共テ利用入試の偏差値は77~78と天文学的な難易度です」(前出の教育ライター)。80年代に見られた早稲田バブルの復活のようにも見えるが、大手予備校関係者はこう疑問を呈する。

「早稲田人気の復活は確かでしょうが、早稲田と慶応では求める学生が異なります。早稲田が入試に共通テストを利用しているのとは逆に慶応は頑なに共通テスト利用を導入していません。代わりに文学部、法学部、経済学部などでは小論文が課されます。特に総合政策学部、環境情報学部は小論文の配点が半分以上で論理的思考が求められます。早稲田の入試はコツコツ努力型の学生に向いている一方、慶応は努力したからといっておいそれと解ける問題ではありません。得点のために重要なのはひらめきやセンス。グローバル化された複雑な社会を生きていくためにはこちらの方が大切な気がしますね」

 別の大手予備校幹部もこう漏らす。

「小論文のウェートが高い慶応の入試は、創設者の福沢諭吉が唱える実学の精神に沿ったものです。大学に入学したらすぐにでも社会で仕事ができるほどの知識と実力、論理的思考力を兼ね備えた即戦力を求めています。安易に共通テストを入試に取り入れる私立大学が増えていますが、手間暇を省いて受験料を稼ぎたいという大学側の内情が見え隠れします。採点にあたり教員の労力を要する慶応の入試は、手間暇はかかるものの、実学の精神に沿った人材を求めるという意味では、理にかなっているように思います」

 留学生を増やすなどのグローバル化を急ぐ早稲田は、社会でコンピテンス(成果発揮力、コミュニケーション力、リーダーシップなどの社会的能力)を発揮できる教育を目指すとしているが、慶応の入試はより実践的ということらしい。さらにはこんな意見も。「早稲田は学生数が多すぎますね。政経学部が入る新築の3号館はお昼休みになるとエスカレーターは大渋滞で通勤ラッシュのようです。学生1人1人に教員の目が行き届くのか、心配になります」(大学の非常勤講師)。

 80年代の早稲田政経はゼミに入れる学生が全体の半分ほど。大教室授業ばかりで就職の面倒も見ないという野放し状態だった。当時と比べるとはるかに改善されたが、それでも当時の惨状を知る政経OBは「早稲田バブルといってもそれは入試だけ見たら、ということでは。両方合格したら子どもには現役とOBのネットワークが強い慶応に進学してほしいですね」と本音を打ち明ける。

 作家の村上春樹や映画監督の是枝裕和、メルカリ創業者の山田進太郎らを輩出したワセダに憧れる受験生が数多くいるのも確かだ。ただ、「地方から見ると早稲田も慶応も同じに見えます」(現役の政経学部生)という冷めた声もある。

 バブルに惑わされず進学先は慎重に考えるべきだろう。

デイリー新潮編集部

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