「アンチヒーロー」 Netflix世界ランキングで「不調」のなぜ? 大げさな“顔芸”に海外視聴者の反応は

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第1話冒頭で“脱落”

 ただ、「VIVANT」も「アンチヒーロー」もNetflixの世界配信では、いずれも結果を出せていないようだ。同公式ホームページで調べると、「VIVANT」は昨年末に台湾で1週だけ9位に入ったが、翌週には圏外に。「アンチヒーロー」は初回からいきなりNetflixの日本ドラマ部門で1位(4月15~21日)を記録。以降、6月3~9日の週まで4位以内をキープするなど国内では確実な人気を集めているのだが……。

「『アンチヒーロー』は表向き『海外を目指す』とボルテージを上げているわけではありません。ただ、同じ日曜劇場の『VIVANT』が海外配信で大こけする一方、今年1月期の二階堂ふみ主演の同局火曜ドラマ『Eye Love You』が韓国のNetflixTOP10に8週連続でランクインする快挙となった。それだけに局内では『アンチヒーロー』の海外での反応が気になっているはずです。しかし、日本以外でTOP10入りを果たせていないのが現状です」(前出のスポーツ紙記者)

 世界配信で結果を出せていないだけに「『VIVANT』の二の舞か……」との声が上がっても仕方がない。同じクールに放送された石原さとみ主演のテレビ朝日系「Destiny」が、Netflix配信の香港と台湾で4週にわたりTOP10入りしたこととは対照的だ。

 それにしても何が足りないのか。海外の法廷ドラマに詳しい放送ライターがこう話す。

「海外のプロデューサーに聞くと、第1話冒頭で明墨が拘置所の緋山に向かって『人を殺しましたか』『殺人者になったらどうなるか』などと延々と語りかける場面で、海外の視聴者は“脱落”したそうです。この場面の背景には、日本の刑事事件において被告人となった場合、有罪率は99.9%、つまり裁判=有罪という図式が海外では理解されにくいのでしょう。多くの国で、取り調べの時に被疑者、被告人に対して、弁護士の支援を受ける権利が広く保障されていて、有罪率も日本ほど高くないです」

 海外事情に詳しい放送評論家は日曜劇場のある特徴に着目する。

「もちろんプロデューサーや役者によってテイストは異なりますが、2013年の『半沢直樹』以来、役者の“絶叫型の台詞”と極度に“仰々しい顔面表情”が強調されるようになりました。『日本沈没-希望のひと-』『ドラゴン桜』『VIVANT』そして『アンチヒーロー』でも、まるで演劇を見ているかのような、一部俳優のオーバーリアクションが目立ちます。歌舞伎や狂言の文化が浸透している日本では、こういう顔芸や顔相撲に視聴者はカタルシスを覚えて喝采を送るのでしょうが、それも昭和世代の男性だけでは。海外では『大げさすぎる』『幼稚』などと不評です。世界を目指すなら演出の見直しが必要でしょう」

“アンチ”日曜劇場――。それくらいの改革が必要なのかもしれない。

デイリー新潮編集部

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