「摂取した脂肪の約25%を排出」 日本初の“やせる市販薬”が登場! 「価格は1カ月で8800円」

ドクター新潮 ライフ

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入手できる対象は?

 食欲を抑えることで体重減少が望める糖尿病治療薬の“転用”が世界中で脚光を浴びている。同じ成分で今年2月、肥満症治療薬として発売された注射製剤もあり、さらに4月には国内初の“やせる市販薬”まで登場――。そろい踏みした「魔法の薬」に、あらためて迫る。【前後編の後編】

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 さて、前編で紹介したGLP-1受容体作動薬とは全く異なる機序を有し、かつ市販薬として流通する最新の経口剤がある。

 それは、今年4月に発売された日本初の内臓脂肪減少薬「アライ」である。医療ジャーナリストによれば、

「アライは脂肪を分解する酵素であるリパーゼの働きを抑える薬で、処方箋の不要なOTC医薬品ではありますが、誰でも買えるわけではありません。条件はウエストが男性85センチ、女性90センチ以上。BMIは25以上35未満で、高血圧や脂質異常症などの健康障害がない(肥満症ではない)肥満の人が対象です」

 とのことで、

「最初の購入時には、販売薬局の薬剤師に1カ月前からの食事や運動・体重などの記録を提出する必要があります。一方で薬剤師もまた、事前に『eラーニング』で製品についての講習を受けねばならず、購入者と対面しながら書面で薬剤の情報を提供することが義務付けられている要指導医薬品です」

食事から摂取した脂肪の約25%を排出

 価格は1カ月分90カプセル入りで税込8800円。服用すれば、食事から摂取した脂肪のおよそ25%が排出される効果を望めるという。

 発売元である大正製薬の開発責任者に聞くと、

「服用は食事中か食後1時間以内に1回1カプセルです。臨床試験では、1年間の服用で内臓脂肪が平均21.52%、腹囲が4.89%減少したとのデータが確認されています。また腸内環境に関する基礎研究においては、太っている方に多く見られる特徴的な細菌、いわゆる悪玉菌が減って善玉菌が増えてくることが示唆される結果が得られています」(藤田透・開発推進グループマネージャー)

 その具体的な作用機序は研究中だが、アライによって脂肪が脂肪酸とグリセロールに分解されるのが阻害され、悪玉菌のエサである脂肪酸の過剰な生産が抑えられるためではないかと考えられるという。続けて、

「現在、弊社と取引がある全国のドラッグストアや調剤薬局のうち、薬剤師の方がいらっしゃる約1万1000店舗で購入できます。対応する薬剤師さんに観ていただくeラーニングは約35分の動画で、日本肥満学会に監修していただいています」

 その学会の理事長を務める千葉大学の横手幸太郎学長は、

「肥満学会では、健康障害の改善のため3%以上の体重減少を推奨しています。eラーニングでは、肥満と肥満症を含めて総合的に学んでいただく内容となっていますが、購入者の健康指導という観点から、薬剤師さんの果たす役割は非常に大きいと思います。購入者の方にしても、漫然と飲み続けて痩せればいいという考えではなく、きちんと数値目標を立てて自己管理をするという意味で“主体的な服薬”といえるかもしれません」

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