「週1回の注射で10%の体重減少が」 「糖尿病薬ダイエット」ブームについて専門家が解説

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10%以上の体重減少

 そもそも肥満症の対策として、食事療法や運動療法では3~5%程度の減量効果があるといい、

「外科治療で胃を小さくすれば20%ほどの体重減少効果があるものの、多くの人に行うことはできません。つまり、これまでは5~20%の間を埋める治療法がなかったわけですが、ウゴービが登場し、それが週1回の注射によって可能になりました。平均して10%以上の体重減少と、糖尿病や脂質異常症、脂肪肝、あるいは膝や腰の痛みなどの改善が期待されます」(同)

 これには前出の砂山院長も、

「従来、糖尿病の注射製剤は1日1回打たなければならなかったところ、セマグルチドが開発されて週に1回で済むオゼンピックの発売へとつながりました。ここから“肥満症の患者さんにも使い勝手がいいように”と、適応拡大されたのがウゴービです」

 としながら、

「現在のところは処方できる施設が限られており、また投与期間も、治験の期間に合わせて最大68週間という制限がある。副作用としては消化器症状(食欲不振、吐き気、便秘、下痢等)や急性膵炎の恐れなどが挙げられています」(同)

 それでも、保険適用でこの上なく強力な効果が見込めるのだ。

ウゴービより体重減少効果が高い?

 かように優れた肥満症専用薬を世に出したノボノルディスクに対し、ライバルのイーライリリーも手をこまぬいてはいない。すでに昨年暮れにはマンジャロと同じ成分(チルゼパチド)の肥満症治療薬「ゼップバウンド」を米国で発売し、日本でも肥満症に対するチルゼパチドについて厚労省に承認申請したことを、今年5月に日本法人の社長が明らかにしている。前出の横手理事長が言う。

「セマグルチドを成分とするウゴービと、チルゼパチドのマンジャロとを直接比較するデータがないので断言はできませんが、チルゼパチドはGLP-1にプラスしてGIPの受容体も刺激することから、あるいはウゴービより体重減少効果が高いかもしれないという評価もあります。いずれにせよ、承認された場合には新たな治療薬として期待が高まると思います」

 後編では、日本初の“やせる市販薬”の驚きの効果と、入手できる対象などについて報じている。

週刊新潮 2024年6月13日号掲載

特集「“やせ薬元年” 『オゼンピック』より進化『ウゴービ』 油排出の市販薬『アライ』 肥満症治療の実力徹底検証」より

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