「週1回の注射で10%の体重減少が」 「糖尿病薬ダイエット」ブームについて専門家が解説
驚きの「やせ効果」
加えてこれらの薬は、糖尿病における腎臓や心臓の合併症を予防する効果を有しており、脂肪肝の改善などをもたらすことが研究から判明している。さらに、糖尿病と密接な関連があるアルツハイマー病にも有効である可能性が指摘されているのだから、まさしく「魔法の薬」というわけだ。
「とりわけマンジャロは、同じくインスリン分泌を促すホルモン『GIP』の受容体にも作動します。これによってレプチンという食欲をコントロールするホルモンの分泌が促され、体重が減る効果が最近の調査で分かっています」(前出ジャーナリスト)
すなわち「やせ効果」はオゼンピック以上だというのだ。ちなみにオゼンピックはインスリン注射と同じくペンに注射針を取り付けて打ち、マンジャロはボタンを押すだけで投与できるというから、しごく簡便である。
30年ぶりに登場した肥満症の治療薬
さらに今年2月、「肥満治療」において画期的な出来事があった。ノボノルディスク社が製造する、オゼンピックと同じ成分の肥満症治療薬「ウゴービ」が、日本で販売を開始したのだ。
これに先んじて厚労省は昨年3月、肥満症薬として製造販売承認している。先のジャーナリストが言う。
「国内で保険適用される肥満症の薬はこれまで、1992年に承認されたサノレックス(一般名・マジンドール)だけでした。ただしこの薬は薬理作用が覚醒剤のアンフェタミンと類似しており、依存症も懸念され、現在はあまり用いられていません。今回のウゴービは、およそ30年ぶりに登場した肥満症の治療薬なのです」
日本肥満学会理事長を務める千葉大学の横手幸太郎学長が言う。
「肥満症とはBMIが25以上で、かつ2型糖尿病や脂質異常症、高血圧症といった11の健康障害が一つでもある病気の状態を指し、単に太っている状態の『肥満』とは異なります。ウゴービは肥満症の方に適応される薬であり、グローバルに行われた臨床試験では、対象者がBMI27以上かつ健康障害が二つ以上ある人、もしくはBMIが35以上かつ健康障害が一つある人という条件だったため、実際の適応もこれに準じる形になっています」
前述のようにオゼンピックと同じセマグルチドを有効成分とする薬ではあるが、
「用量や投与法の異なる臨床試験を受けているため、別の薬剤として扱われます。オゼンピックの最大投与量は1回1ミリグラムで、ウゴービは2.4ミリグラムですから、いっそう大きな効果が見込めます。ウゴービの作用機序は、まず中枢神経に働いて満腹感を高めるとともに、胃の働きを抑え、食べ物がどんどん入っていくことがないようにするというものです」(同)
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