【光る君へ】一条天皇がいくら望もうとも定子と会わせるわけにはいかない…裏にあった藤原道長の“私情”

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一条天皇の「私情」を拒む道長の「私情」

 父の藤原為時(岸谷五朗)が国守として赴任するのに同行し、まひろ(吉高由里子、紫式部のこと)は越前へと赴いた。このため、NHK大河ドラマ『光る君へ』の第23回「雪の舞うころ」(6月9日放送)は、主な舞台が越前だったが、都での場面に気になる展開があった。

 天皇の秘書官長に当たる蔵人頭を務める藤原行成(渡辺大知)は、一条天皇(塩野瑛久)から、出家してしまって会えない中宮の定子(高畑充希)への思いを聞かされる。それに同情した行成は、藤原道長(柄本佑)に天皇の思いを伝えたが、道長は行成を戒め、「頭を冷やせ。帝の術中にはまってはならぬ」といったのである。

 要するに、定子は出家した身であるのだから、一条天皇が定子のもとを訪れてはいけないし、定子を内裏に呼び寄せることもままならぬ。天皇がそれをどれだけ強く望もうと、拒まなければいけない――。道長が示したのは、そういう意志だった。

 関白にまで上り詰めた藤原兼家(段田安則)の息子ではあっても、末っ子の五男(正妻の子としては三男)にすぎなかった道長は、自分が政権を担当するなど思いもしなかっただろう。ところが、長徳元年(995)に兄の道隆と道兼が相次いで病死。さらに、道隆の嫡男で官位が道長を上回っていた伊周(三浦翔平)も自滅し、いまや左大臣および内覧(太政官が天皇に奏上するすべての文書に事前に目をとおす役職)になった。

 すなわち、政権のトップの座にあった道長としては、宮中の規律と権威を維持するためにも、天皇の私情に左右されるわけにはいかない。道長が示したのは、そのような、いかにも権力者らしい判断だったが、じつは、背景にはもう一つ、判断の根拠があった。

 これを機に天皇と定子の関係を割いてしまいたいという、いわば道長の「私情」である。史実の道長は、これ以降、定子を露骨にいじめ続けたのだが、その動機は、宮中にとってというよりも、道長個人にとって、定子が邪魔だったからにほかならない。

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