「アニソンは世界を超える」…高橋洋子が「残酷な天使のテーゼ」で“発売当時のまま”の歌唱を続ける理由

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久保田利伸のコーラスで

 大学中退後、キティレコードがアーティストを発掘するイベント「CSPC」でベストボーカル賞を受賞。1987年に久保田利伸が発売したアルバム「GROOVIN’」のツアーで、普段、コーラスを務めていたAMAZONSが松任谷由実のツアーに出ていたため、代わりのコーラスを探すオーディションの話が持ち掛けられた。

 オーディションに赴いたものの、場違いなほど広いスタジオに緊張が高まり、「がくがく震えて、声もブルブルだった」といい、審査員はみな、高橋に対しバツを付けたという。ところが一人だけマルを付けたのが、誰あろう久保田本人。「あの子は音程がいい。声もすごくいい。だから僕は使いたい」との一声で合格が決まった、と後に知ったという。

 合唱団にいた頃から「みんなで出るのはいいけど、一人で人前に出るのは苦手」と自身を見抜いており、「ソロよりもバックコーラスやスタジオミュージシャンとしての仕事の方が性に合うなと思っていて、実際に久保田さんのツアーは楽しくて。楽しいのにツアーが終わったらやめるのがつらいと思ったほどだった」と振り返る。

 ところが面白いもので、ユーミンのツアーから、AMAZONSが久保田のツアーに復帰すると、今度はユーミンツアーのコーラスに参加。それが5年も続くことになった。

急遽のレコーディングでデビューするも…

 91年10月、シングル「おかえり」を発売したが、これはポニーキャニオンからの発売。その後、所属していたキティレコードに、フジの月9ドラマ「逢いたい時にあなたはいない…」の挿入歌の話が舞い込む。劇中で流れるピアノ曲に歌詞をつけて流れるという話だった。ただし、納品までの時間が極めて短かったため、「楽譜が読める洋子ちゃんがいい」と指名があり、ジャケット写真の撮影をすることもなく、レコーディングして発売するというバタバタぶり。この「P.S. I miss you」が正式なデビューシングルとなった。

 ところが同ドラマのディレクターが「フランス語の方がよかった」と、結局、挿入歌として使われることはなく、ドラマの「イメージソング」という“立場”にとどまった。

 だが聴く人は聴いているもので、有線放送などで繰り返し流され、スマッシュヒット。翌年には日テレのドラマ「悪女」の挿入歌「もう一度逢いたくて」とのカップリングで再発され、同年のレコード大賞新人賞を「もう一度…」で、日本有線大賞新人賞を「P.S.…」で受賞した。

 ただ「プロモーションも本当にいろんなところに行って、小さなレコード店もどんどん回ったけれど、大して売れなかった」という。

 同じ年に久保田のアルバム「Neptune」のツアーに再びコーラスとして声がかかり、後のFUNK THE PEANUTSの浦嶋りんこらとともに参加した。

「だから、アーティスト写真を撮って、数ある候補の中からデビュー曲を選んで、というデビューじゃなかったんですね。こちらもコーラスやスタジオミュージシャンをベースでやっていたし、一般的なデビューとは一線を画していました」

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