Mrs. GREEN APPLE「コロンブス」騒動 ベートーヴェンの描写から感じ取れる「ロックのルーツとの遠い距離感」
新曲「コロンブス」のMVが強い批判にさらされ、公開からすぐに配信停止となった人気バンド、Mrs.GREEN APPLE(ミセスグリーンアップル)。コロンブスの描き方に注目が集まりがちだが、「共演」のベートーヴェンに関しても問題あり、という指摘も――ベテラン音楽ライター、神舘和典氏のレポート。
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文明人と非文明人という構図
うーん……という印象だ。日本の3人組バンド、Mrs. GREEN APPLEの新曲「コロンブス」のMV(ミュージック・ビデオ)がネットを中心に批判の標的になっている。所属するレコード会社、ユニバーサルミュージックはMVの公開を停止し、バンドの公式ホームページに謝罪文をアップした。
「歴史や文化的な背景への理解に欠ける表現が含まれていたため、公開を停止することといたしました。
当社における公開前の確認が不十分であり、皆様にご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます」
このMVでは3人のメンバーがそれぞれ、コロンブス、ナポレオン、ベートーヴェンに扮して、南の島のようなところに行く(設定としては時空を超えた旅なのだろう)。ある家に入ると、類人猿風のおそらく先住民族が6人、バナナやリンゴやピザやショートケーキを囲み、ホームパーティーを楽しんでいる。
メンバー3人は6人とともに歌い、踊り、記念写真を撮影する。さらに、ピアノを教えたり、人力車を引かせたり、乗馬を教えたり。文明人と非文明人という構図を描いてしまった。
「深くお詫び申し上げます」
公開直後からネットには批判が殺到した。
先住民が猿人のように描かれていること、文明人が先住民に一方的にモノを教え、また労働を強いているように見えること等々が「植民地主義」そのものではないか、というのが批判する側の意見である。
事態を受けて、メンバーの大森元貴さんも謝罪と反省のコメントを発表した。
「『コロンブス』のMusic Videoを製作するにあたり、年代別の歴史上の人物、類人猿、ホームパーティー、楽し気なMVという主なキーワードを、初期構想とし て提案しました。しかしながら、意図とは異なる伝わり方もするかもしれないと思い、スタッフと確認し合い、事前に特殊メイクのニュアンス、衣装、演じ方のフォロー、監修をしていたつもりでおりましたが、そもそもの大きな題材として不快な思いをされた方に深くお詫び申し上げます」
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