「藤浪に似ている?」アスレチックス・ミラーがMLB移籍市場の目玉になった理由

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100マイル超えを連投

 メジャーリーグの今季トレード終了期日は、7月31日(アメリカ東部標準時間16時)だ。地区優勝を狙うチームは、層の薄いポジションを埋める。下位に低迷するチームは主力選手を手放す代賞として、来季以降に活躍しそうな有望な若手をもらう。今年のトレードで去就が注目されているのが、アスレチックスの投手メイソン・ミラー(25)。何と、日本人メジャーの“あの人”に似ているというのだが……。

「低迷するアスレチックスにとって、希望の星です。『この投手は本物ではないか』と、知名度を全国区に押し上げたのは、4月25日のヤンキース戦でした。昨年12月の大型トレードでヤンキースに移籍したフアン・ソト(25)から3球三振を奪ってみせたのです。昨季、35本塁打、109打点を稼ぎ、4年連続シルバースラッガー賞に選ばれた強打者が、簡単に手玉に取られたのです」(米国人ライター)

 改めて、その試合を振り返ってみよう。アスレチックスは2点リードで迎えた9回裏、ミラーをマウンドに送った。ヤンキースファンは、ソトや22年本塁打王&打点王のアーロン・ジャッジ(32)にも打順がまわるため、逆転を信じていた。アウェイ感が充満した球場の雰囲気を一変させたのは、100マイル(約160キロ)の剛速球だった。

「21年ドラフト会議で3位指名された新星です。MLB公式サイト内に若手有望株を格付けするコーナーがあって、同サイトが『球速の計測を始めて以来、1試合で100マイル強を15球以上投げた投手はミラーが史上10人目』と紹介され、さらに注目されるようになりました」(前出・同)

 ミラーのメジャーデビューは、昨年4月19日のカブス戦だった。先発投手として81球を投げ、うちストレートは51球。100マイル超えを連投し、地元オークランドのファンを驚かせた。しかし、剛速球投手の宿命だろうか。右肘を痛め、シーズン序盤戦でリタイアしてしまい、昨季は注目を集めることはなかった。

「球は確かに速い。ただ、回を追うごとに、制球難になる傾向も見られました。ケガの復調もそうですが、制球力がどれくらい安定しているかも注目です」(現地メディア関係者)

 100マイル超え、アスレチックス、制球難、今季から背番号は「19」に昇格――これらのワードから、日本のファンが真っ先に思い浮かべるのは現メッツ・藤浪晋太郎(30)だろう。実際、前出のライターに問うと、

「FUJI(藤浪)ほど、四球で自滅することはない。捕手が構えたところと反対のコースに来ることはありますが」(前出・米国人ライター)

 と苦笑いされたが、昨季途中、藤浪がオリオールズへトレードされた件を指してこうも語っていた。

「オリオールズがストレートの速い投手を探していたのは事実ですが、ミラーが本命だったのではないかと言われています。彼の肘の故障もあり、藤浪に切り替えたのかもしれません」(前出・現地メディア関係者)

藤浪との違いは

 藤浪とミラーの最大の違いは投球フォームだ。藤浪の投球フォームにはパワーがあるが、ミラーはどちらかといえば、ゆったりとしたリラックスフォーム。オークランドのファンは藤浪の印象が強かったようで、「脱力フォームなのに、どうして100マイルも出るんだ?」との驚きの声も多いという。

「将来のサイ・ヤング賞候補とも言われています。本来ならば、先発投手として大きく育てたいところですが、右肘の故障から復帰するシーズンでもあるので、マーク・コッツェイ監督(48)は『今季はリリーフのみ』と決めています」(前出・同)

 ミラー自身が公表している話だが、彼は「1型糖尿病」の持病を抱えている。ウェインズバーグ大学2年生のときに診断を受け、80kg台だった体重が68kgまで激減した。食事面を含めた健康管理に気を配り、野球を続けた結果、投手としての技術、球速アップにも繋がったという。その後、同大で金融学の学士号取得を機にMLBスカウトが多く集まる強豪・ガードナーウェブ大学に転校。1部リーグの強豪校のなかで揉まれ、アスレチックス3位の指名を勝ち取った。

 性格は温厚で、今も月3回のペースで血糖値を測定し、日々の食事の前と就寝前にはインスリン注射をしている。試合後、チームメイトが瓶ビールをラッパ飲みするのには見向きもせず、右肘のアイシングやマッサージに専念している。元々は3部の一般校出身で、病気を抱えながらも這い上がってきた経歴に、ファンは共感しているという。

「ミラーはここまで23試合に投げ、12セーブを挙げています。奪三振数は55。計111人の打者と対戦してきたので、『2人に1個』の割合です。与四球11。およそ10人に1人の割合で四球を出しています」(6月10日時点/前出・米国人ライター)

 投手の能力を測るK/BBなる指標がある。奪三振数を与四球で割ったもので、奪三振数が多ければその数値は高くなる。ミラーはリリーバーとしては与四球数が多いほうだが、K/BBは「5.00」を記録している。「3.50以上は優秀な投手」とされており、与四球の多いミラーがAランクにいるのは「およそ2人に1人の割合」で三振を量産しているからだ。

「ゆったりとした投球フォームから100マイルの剛速球が投げ込まれるのですから、対戦バッターからすれば、タイミングが取りづらい。ミラーは藤浪と同じでスライダーを得意球としています。カットボール、チェンジアップも投げますが、変化球の割合が多くなると、制球力が悪くなります。でも、ミラーはまだデッドボールは1個も出していません」(前出・同)

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