「3歳児は覚えてないからウィンウィン」と語る性加害者も… 性犯罪治療のプロが解説する小児性加害の実態 「日本版DBSは加害者を守るものでもある」

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若年層の4人に1人が性暴力被害を経験

 虐待も含め、子どもへの暴力は大変痛ましいものですが、とりわけ小児性加害者による子どもへの性暴力、性虐待は非常に深刻かつ極めて許し難い犯罪です。「日本版DBS」制度の創設は、こうした犯罪から子どもたちを守らなければいけないという、必然的課題を解決するために成立が目指されているのです。

 内閣府が2022年に行った若年層(16~24歳)の性暴力被害に関するアンケートでは、実に4人に1人以上が何らかの性暴力被害に遭った経験を持つことが明らかになりました。

 性犯罪は、発生件数のうち被害届が出されたケースが14%に過ぎず、示談や不起訴で起訴率が5割を切るなど、統計に現れる数字と実際の発生件数との差が極めて大きい、いわゆる“暗数”が多い犯罪であるといわれています。2022年の警察庁「犯罪統計」によれば、0~12歳の子どもに対する強制性交等の認知件数は216人、強制わいせつは769人で、合わせて985人となっていますが、この数字はあくまで、氷山の一角だと考えるのが妥当。相当数の子どもが性暴力の被害に遭っていることは、紛れもない事実なのです。

 子どもに性的関心を持つ(=小児性愛障害の)人は男性で人口の5%、女性で1~3%程度です。

「子どもと関わる職業」が3割

 そして当院において初診時、小児性加害者の職業は教員関係が16%。保育士なども含めると、子どもと関わる職業に就いている人は3割近くもいる。

 現に教員や保育士、塾講師、ベビーシッターなどが、子どもへの性暴力を繰り返していたという報道は後を絶ちません。昨年、大手中学受験塾「四谷大塚」で講師が生徒を盗撮し、逮捕されたのは記憶に新しい。2020年にはベビーシッターアプリ「キッズライン」のシッターが預かり中の男児にわいせつ行為をして逮捕され、今回の議論のきっかけになりました。

 私はこれまで20年以上、ソーシャルワーカーとしてアルコールやギャンブル、痴漢や盗撮、小児性犯罪などさまざまな嗜癖問題に関わってきました。2006年からは性犯罪者の再発防止プログラムを日本で初めて民間のクリニックでスタートし、3000人を超える対象者の治療に携わっており、2018年には小児性犯罪を繰り返す当事者に特化した治療グループも立ち上げました。

 200人以上の小児性犯罪者を見てきた経験から、子どもへの性暴力の手口がいかに巧妙で、加害者の治療も難しく、また、被害者に甚大な影響を与えるかを痛感しています。

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