「3歳児は覚えてないからウィンウィン」と語る性加害者も… 性犯罪治療のプロが解説する小児性加害の実態 「日本版DBSは加害者を守るものでもある」

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 ついに導入が近付いてきた「日本版DBS」。子どもと接する教員や保育士などにつき、その性犯罪歴を照会する制度だが、なぜ今この仕組みが必要とされるのか。背景にある「性加害者」の知られざる実態について、性犯罪治療の専門家・斉藤章佳氏が解説する。

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「先生、俺、このまま刑務所から出たくない。また絶対に小さい子をやってしまうって分かっているんだ」

 かつて私が面会した、出所間際の受刑者の言葉です。

 小児性犯罪者の立ち直りの難しさがよく分かると思います。

〈そう語る斉藤氏。

 5月23日、「こども性暴力防止法案」が衆議院を通過し、今国会で成立の見通しとなった。

 法案の目玉は「日本版DBS」制度の導入。これはごく簡単に言えば、子どもの性被害を防ぐため、子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴を確認する制度だ。〉

専門家に聞く「導入の背景と必要性」

〈具体的には、行政が管理・監督権限を持つ学校や認可保育所などに、教員や保育士らの性犯罪歴の確認を義務付け、その者に性犯罪歴があった場合、子どもに直接関わる業務に就かせないなどの措置を講じさせるもの。

 行政の権限外にある学童保育や認可外保育所、学習塾などについては対象外だが、希望する事業者は参加が可能で、それを広告に表示することを認める。

 犯歴は事業者がこども家庭庁に問い合わせ、同庁は法務大臣に照会。回答を得ると、事業者に犯罪事実確認書を交付してその有無を伝える。

 照会期間は、拘禁刑が刑執行終了から20年間、罰金刑以下は10年間。犯歴には刑法犯に加え、痴漢や盗撮などの条例違反も含まれる。

 この制度はイギリスのものを参考にしているため「日本版DBS」と呼ばれるが、前歴を持つ人の実質的な排除にあたり、プライバシーの侵害、また職業選択の自由に反するのではないかとの批判も出た。それでもなぜ今、このような制度が必要とされているのか。

 斉藤章佳氏は、日本最大規模といわれる依存症回復施設「榎本クリニック」で20年以上、性加害者の治療に関わってきた精神保健福祉士・社会福祉士だ。今制度の導入に当たっても、こども家庭庁に要望書を連名で提出した斉藤氏に、導入の背景と必要性を聞いた。〉

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