フリマアプリで拳銃入れ10万円、手錠9万円…「警察装備品」管理の実情を警察庁に聞いた 着古した制服は自己廃棄も認められている

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全国で不祥事が

 警察の不祥事が相次いでいる。

 鹿児島県警では、前生活安全部長で元警視正の本田尚志容疑者(60)が、職務上知り得た秘密を洩らした国家公務員法違反の疑いで逮捕・送検された。本田容疑者は、現職警察官の犯罪行為を、野川明輝本部長(53)が隠ぺいしたと主張。一方、野川本部長は「必要な対応をとった」と話し、両者の言い分は真っ向から対立している。

「キャリアの本部長と、地元採用で部長まで上り詰めた幹部が、捜査方針や事件処理を巡って対立することは珍しくありません。ただ、大抵は話し合いの末、本部長の指示に従うものです。納得できないなら管区警察局の局長級に相談するなど、警視正ほどの幹部になれば他に手はいくつかある。退職後とはいえ、今回の本田容疑者の行動を見ると“正義感”もさることながら、野川本部長へかなり強い“恨み”を抱いているのではないかと思います」(本部長経験のある警察庁OB)

 同県警では、他にも捜査情報の漏洩に、隠し撮りや不同意わいせつなどでも現職警察官が逮捕されている。神奈川県警では6月5日、面識のない警察官の独身寮の部屋に侵入した疑いで、組織犯罪分析課の巡査部長(38)が逮捕された。その直前、こんな不祥事を起こした警察官も――。

 富山県警は5月25日、県警本部の倉庫に侵入し、保管してあった廃棄予定の手錠や拳銃入れを盗んだ容疑で、県警本部交通指導課に勤務していた警部補の宮崎伸一朗容疑者(43)を建造物侵入と窃盗の疑いで逮捕した。

「今年の2月、他県警から富山県警の装備品がフリマアプリで販売されているとの情報提供がありました。拳銃入れは10万円、手錠は9万円で売れており、履歴などから宮崎容疑者が捜査線上に浮かびました。備品は回収されています」(社会部記者)

 倉庫は普段は施錠されていたが、宮崎容疑者は当直勤務の日に勝手に鍵を持ち出し、犯行に及んでいたという。

「その後の調べで、倉庫から持ち出したのは十数点で階級章もありました。さらに宮崎容疑者のフリマアプリの履歴から、他の部屋や施設からも備品を持ち出し、転売していた疑いがあり、捜査が継続されています」(同)

ネットで入手できる警察グッズ

 実際、「警察グッズ」はネットでもよく目にする。特に制服や階級章、手帳が人気のようだが、マニアは手錠入れや警笛、「防犯」腕章など、細部にこだわったグッズを求めている。堂々と「本物」を謳うものもあれば、「撮影用小道具」「悪用厳禁、レプリカ品です」などと、注意を促しているケースもあるが、

「ネットで現職警察官の制服が売られている」

 との情報を元に、警察が動いた事件は2001年1月に発覚した。神奈川県警の現職警察官の制服がインターネットのオークションサイトで複数、売りに出されていることが分かったのだ。当該の警察官は、制服を知人に渡したところ、この知人が勝手にオークションにかけたという。

 2004年2月には、本物そっくりの警察官の制服を着て電車内を“パトロール”していた無職の男が軽犯罪法違反(称号等詐称)などの疑いで警視庁に逮捕された。男は警察グッズの収集が趣味で、通販で買ったものを警察官の制服に似せ、警棒やおもちゃのけん銃も装着。手帳がない代わりに「鉄道警察隊員特務係巡査部長」と書かれた名刺を用意していた(ちなみに“特務係”とは鉄道警察隊に実在し、スリを専門に捜査する係)。

 2006年3月、ネットオークションで入手した警察官の制服を着て、300万円かけて改造したニセ覆面パトカーで“取り締まり”を行っていた警備員の男が神奈川県警に逮捕された。サイレンを鳴らし赤色灯を回転させて車に停止を命令し、「警察本部だ。免許証を見せろ。会社はどこだ」などと言いながら、切符を切られないことを不審に思った被害者の通報で発覚した。男は警察官に憧れていたものの「千葉、神奈川県警の試験を受けたが合格できなかった」と供述。それにもかかわらず、警察内部の専門用語を熟知していたという。

 2012年3月には、現職の大阪府警巡査部長が警察手帳や記章を偽造しただけでなく、制服などを販売。6年間で1000万円以上を売り上げ、懲戒免職処分となっている。また、昨年3月には「公安の警察官僚で警視正」を名乗り、制服姿や警察手帳の写真を見せて女性を騙し、結婚詐欺をはたらいた男が大阪府警に逮捕されている。

 マニアが純粋に楽しむだけならいいが、警察グッズ、それも制服は悪用されると事件に発展する。富山の事件で狙われた「廃棄予定」だった警察の備品は何年ほどで廃棄するのか、また、貸与品などの管理はどうなっているのか、警察庁に聞いた。

「警察庁では、拳銃入れや手錠等の貸与品の使用期間に関する指針等は示しておらず、都道府県警察で個別に故障状況や損傷具合を判断して廃棄を行っています。退職の際には、各警察官に支給又は貸与している物品(制服等)は返納されています。なお、制服は貸与品ではなく、支給品であるため、着古した制服については、エンブレム等を返納させた上で、退職者による自己廃棄を認めている場合もあります」

 退職者の中には制服を奉職の記念に保管しているケースはあるという。ネットを中心に「警察グッズ」が販売されている実態については、

「警察庁においては、支給品や装備品等について、悪用等が行われることのないよう、平素から個々の警察官が保有する支給品等の現物確認を行ったり、廃棄に当たっては裁断等の措置を講じた上で廃棄するなど、適正な管理を行うよう、全国警察に対して指示を行っているところです」(同)

 最近は「オレオレ詐欺」の現場でも、被害者を信用させるため、テレビ電話やLINEのビデオ通話に、警察手帳を提示したり、制服を着たりした“警察官”が登場した事例もある。制服を着ているからと言っても、安心できない時代になってしまったようだ。

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