【虎に翼】「この大馬鹿たれ!」滝藤賢一が演じる多岐川幸四郎にはモデルがいる…どんな人物だったのか

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約1635万人が観ている

 朝ドラこと連続テレビ小説「虎に翼」が中盤に入り、主人公・佐田寅子(伊藤沙莉)が念願の裁判官になる日が近づいてきた。登場人物に家庭裁判所設立準備室長の多岐川幸四郎(滝藤賢一)や同補佐の汐見圭(平埜生成)らが加わり、寅子の明律大法学部の同級生だったチェ・ヒャンスク(ハ・ヨンス)が汐見の妻・香子となって帰ってきた。ますます面白くなってきた。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】

「虎に翼」の人気は衰えを知らない。現在の法務省にあたる司法省民事局主任の久藤頼安(沢村一樹)らが初登場し、裁判官編に入った第10週(6月3日~7日)の関東地方での週間平均個人視聴率は9.4%(同世帯視聴率16.7%)。民放を含めたあらゆる番組の中でトップだった。

 録画視聴分も合わせた同総合個人視聴率の最高値は13.8%(同総合世帯視聴率16.9%)。こちらも全番組の中でトップである(ビデオリサーチ調べ。5月20日から26日の最新データ、同24日分)。

 関東地方の個人視聴率は1%が40.5万人だから、リアルタイムで実に約380万人が観ている。録画分も合わせると、約559万人である。

 全国単位に換算すると、リアルタイム視聴者数は推算約1114万人。録画分も含むと、同約1635万人。趣味趣向が多様化していることを考えると、驚異的な数字である。

 滝藤賢一が演じる多岐川幸四郎らが登場した第11週(10日~14日)も視聴率は高いまま。滝藤のエキセントリックな演技が、この朝ドラの新たなチャームポイントになっている。

 多岐川は寅子が働く司法省家庭裁判所設立準備室の責任者。その口癖は「この大馬鹿たれ!」。他人に厳しいが、自分は会議中にグーグー寝ている。一言でいうと変人だ。

 しかし、実際には情に厚く、骨のある男で、言動は熱い。多岐川の右腕である汐見圭が朝鮮でヒャンスクと恋に落ち、結婚すると、2人を日本に連れて帰り、自宅に居候させている。

 ヒャンスクが香子と名乗るなど民族の違いから難しい立場に置かれていることを知った寅子は、「私に出来ることはないのでしょうか?」と申し出るが、多岐川は一蹴した。第54回だ。

「香子ちゃんはすべてを承知で汐見と結婚したんだ。この国にしみついてる香子ちゃんに対する偏見を佐田くんに正す力はあるのか! ないだろ? 助けてほしいかどうか分からん人に使う時間は今の君にはない」(多岐川)

 寅子に影響を与える人がまた増えた。

 滝藤の朝ドラ出演は「半分、青い。」(2018年度上期)のヒロイン・楡野鈴愛(永野芽郁)の父親・宇太郎役以来、4度目となる。周囲によると、滝藤は朝ドラが好きなのだという。時間を掛け、しっかりと撮るからだろう。民放ドラマが本読み(セリフ合わせ)やリハーサルの大部分を省略する中、朝ドラは準備も収録も入念にやる。

 滝藤は仲代達矢(91)が主宰する俳優養成所の名門「無名塾」の出身。20代は舞台を中心に活動していたが、日本航空ジャンボ機墜落事故を取材する地方紙記者たちを描いた映画「クライマーズ・ハイ」(2008年)で、悲惨な事故現場を見て錯乱する若手記者役を演じ、激賞された。鬼気迫る演技だった。

 以後、ドラマ、映画への出演が絶えなくなる。TBSの大ヒットドラマ「半沢直樹」の第1作(2013年)にも半沢(堺雅人)と同期の近藤直弼役で出た。しかし、第2作(20年)には出演していない。理由について本人は明言を避けたが、同じ役柄を続けてやることに抵抗があったというのが定説だ。生粋の俳優である。

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