日本勢6名が参戦する全米オープン開幕 難関のパインハーストで起こりそうなドラマとは

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出場を決めた選手の顔ぶれ

 今大会の出場選手は全156名。スチュワートが勝利した1999年大会に出場していた選手は、タイガー・ウッズ、ミケルソン、マット・クーチャーのわずか3名である。かつての王者ウッズが主催者USGAからの特別招待で臨んでいるという事実も、歳月の流れと時代の変化を物語っている。

 日本勢は松山英樹を筆頭に、石川遼、河本力、清水大成、金谷拓実、星野陸也の6名が参戦する。

 全米オープンは全米と世界各地で行なわれるオープン予選を経て出場する選手が全体の4割以上にも達するため、メジャー4大会の中では「最もオープンなメジャー大会」と呼ばれている。石川、河本、清水も、日本予選を経て出場権を手に入れた。

 最終予選は5月20日に米国の3カ所で、6月3日に米国とカナダの10カ所で行なわれ、かつての有名選手も数多く挑んだ。

 そんな中、マスターズ覇者でメジャー大会連続出場記録を「91」まで更新していたアダム・スコットがパインハーストへの切符を掴み損なったことや、やはりマスターズ覇者でリブゴルフ選手のセルヒオ・ガルシアが補欠に位置付けられたことが、米ゴルフ界ではちょっとしたニュースになっていた。

 スコットは6月10日付けの世界ランキングで61位。ところが、5月に自ら命を絶ったグレイソン・マレーが59位にランクされているため、マレーを除くとトップ60以内と見なされたスコットに全米オープン出場資格が転がり込んだ。ガルシアも繰り上がり出場が決まり、2人のマスターズ・チャンピオンが最後の最後に出場者リストに滑り込んだことはゴルフ界の朗報だった。

注目はスコッティ・シェフラー

 いろいろな話題がある中で今年の全米オープンの最大の注目は、世界ランキング1位のスコッティ・シェフラーがさらなる勝利を挙げるかどうかである。

 2022年のマスターズを制覇してメジャー初優勝を挙げたシェフラーは、今では押しも押されもせぬ世界ナンバー1の王者だ。とりわけ今季の活躍は目覚ましく、すでに5勝を挙げているが、その5つの勝利の内訳にはとにかく驚かされる。

 PGAツアーが誇るシグネチャー・イベントは年間8大会あり、シェフラーは3月、その1つのA・パーマー招待を制して優勝賞金400万ドルを獲得した。翌週には「第5のメジャー」といわれるプレーヤーズ選手権を制し、優勝賞金450万ドルを手に入れた。4月にはメジャー大会であるマスターズを制して360万ドルを稼ぐと、翌週にはシグネチャー・イベントのRBCヘリテージで勝利して360万ドルをゲット。そして先週は同じくシグネチャー・イベントのメモリアル・トーナメントを制して400万ドルを獲得した。

 この5勝で手に入れた賞金の総額は1970万ドル(約30億9000万円)。高額賞金が授けられる大会をことごとく独占しているような状態である。

 しかもシェフラーは、先月の全米プロ2日目の朝、交通整理の警官の「止まれ」の指示に従わなかったとしてその場で手錠をかけられ、逮捕・連行されるも釈放されて試合に戻るという前代未聞の出来事に巻き込まれた「渦中の人」でもあった。

 だが、シェフラーはあの恐怖体験すらモノともせず、「たとえどんな状況でも、ひとたび試合に出たらいいプレーをするのみだ」と言ってのけ、その通り、メモリアル・トーナメントで勝利したばかりだ。

 未曾有の逮捕劇にも動じない強靭なメンタルは、我慢比べとなるパインハーストでの戦いに最も適しているのではないかと見られ、そんなシェフラーが優勝候補の筆頭に上がっていることに誰もが頷いている。

 しかし、何が起こるかわからないのがゴルフである。とりわけ、難関のパインハーストでは予想外の展開も起こりうる。

 だからこそ今年の全米オープンに期待と関心が寄せられている。

舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。

デイリー新潮編集部

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