日本勢6名が参戦する全米オープン開幕 難関のパインハーストで起こりそうなドラマとは
男子ゴルフの今季3つ目のメジャー大会となる全米オープンが、6月13日から16日の4日間(現地時間)、ノースカロライナ州の名門パインハースト・リゾート&CC(No.2)で開催される。【舩越園子/ゴルフジャーナリスト】
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難コースに謙虚な心構えで挑む
名匠ドナルド・ロスが設計したパインハーストは、後にベン・クレンショーらによって改修され、戦略性がより一層高まった。
「タートル・バック(亀の甲羅)」と呼ばれるグリーンは、ボールが止まらないどころか10ヤード以上も転がってグリーン外へ出されてしまうことも多い。ショートゲームの技術力とバリエーション、クリエイティブなコースマネジメント、そして忍耐力を含めた強靭なメンタルが求められる。
今週の現地の天気は概して快晴の予報。亀の甲羅のようなグリーンは日に日に干上がって一層固く速くなり、難度がどこまで上がるのだろうかと心配されている。
バーディー合戦にはならず、「パーならグッドスコアと思うべし」。出場選手たちはそんな謙虚な心構えで挑もうとしている。
パインハーストでの全米オープンは今年が4回目となる。前回の2014年大会はドイツ出身のマルティン・カイマーが2位に8打差の通算9アンダーで圧勝。2005年大会はニュージーランド出身のマイケル・キャンベルが2位に2打差のイーブンパーで勝利した。
そして長年のゴルフファンの記憶にあるのは、ペイン・スチュワートがフィル・ミケルソンに1打差で競り勝った1999年大会ではないだろうか。
スチュワートの感動的なガッツポーズ
当時のミケルソンは、まだメジャー未勝利。愛妻のエイミーが初産を控えており、「エイミーに何かが起こったら、僕は即座に棄権して、エイミーの元に駆けつける」と宣言していた。
一方のスチュワートは、前年の全米オープンで優勝に王手をかけながら、リー・ジャンセンに1打差で惜敗。最終日の後半、USGA(全米ゴルフ協会)のルール委員からスロープレーを指摘され、「計測するぞ」と耳元で囁かれたことから何かが狂い始めた。それゆえパインハーストでは、雪辱に燃えていた。
そんな2人が競い合った25年前、72ホール目に4・5メートルのクラッチパットを沈めたスチュワートが勝利した。その瞬間、スチュワートは拳を握り締めながら右腕を伸ばし、派手なガッツポーズを取った。
興奮する勝者スチュワートが敗者ミケルソンの顔を両手で掴むように抱えながら「キミの番は必ず来る」と励ました場面は、誰の胸にもグッとくるシーンだった。
そんな素敵な勝ち方で全米、いや世界中のゴルフファンを沸かせたスチュワートが、それからわずか4カ月後に飛行機事故でこの世から忽然と消えてしまったことは、あまりにもショッキングな出来事だった。
パインハーストには2005年大会に合わせて、スチュワートの勝利のガッツポーズを再現した像がクラブハウスの裏側(コース側)に建てられた。今大会の開幕前、スチュワート像はメイン・エントランスに移され、パインハーストに挑む選手たちを優しく見守っている。
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