「損失は少なくとも10億円以上にのぼるのでは…」 “ニコニコ動画”サイバー攻撃で関係者が口にする不安

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ハッカーの狙いはよく分からない

 サイバー攻撃の詳細については、角川ドワンゴの社内でも、まだほとんど開示がされていないという。

「サイト自体が止まっているので、今はできる仕事がない状況です。上層部やシステム関係の部署の人間以外は、とにかくじっと復旧を待つしかありません」

 そう話すのは、ニコニコ動画の運営に携わる現役社員のA氏である。

「攻撃を受けたのは出版事業などにも使われている基幹システムで、まさに“心臓”です。そのため、影響がグループ内の広範囲に広がっています」(A氏)

 しかし、一体だれが、何のために――?

「相手が誰なのかは現時点では知らされていませんが、例えば国内の個人のハッカーとは考えにくい。アクセス権なども奪われている状況で、恐らくですが組織的な攻撃を受けたのではないか」(A氏)

 ニコニコの公式発表によれば、クレジットカード情報の漏洩は確認されていないということだが、メールアドレスなどの個人情報が流出した可能性があるかは、現在調査中だ。

「ハッカーの狙いはよく分かりません。もしかすると、個人情報などを盾に“身代金”を要求してきているのでは、と推測する同僚もいますが、はっきりしたことは何も知らされていません」(A氏)

復旧には最低でも1か月を要する?

 復旧までにはかなりの時間がかかる見通しだそうだ。

「公式発表でも“再構築の対応を進める”とありましたが、基幹システムは自社のエンジニアが構築したもので、バックアップが取られているので、再構築は可能なようです。ただ、バックアップを補完する作業などに最低でも1か月はかかりそうです。システムの人はしばらく休み返上でしょうね…」(A氏)

 損失額も計り知れないという。

「ニコニコ動画の収益は、サイト内の広告収入がだいたい月に2~3億円。それよりも圧倒的に大きいのがプレミアム会員の月額料金800円による収入です。今の会員数がだいたい120万人いるので、それだけで月に約10億円の収入になります。推測ですが、サービスがほとんど利用できない今月の月額料金は、何らかの形で補償することになるのではないでしょうか。そうすると、事態が1か月で収束したとしても、少なく見積もって10億円以上の損失が出ることになる」(A氏)

 影響はKADOKAWAグループ全体に及んでおり、損失額の全体像が明らかになるには、まだ時間がかかりそうだ。

 ニコニコ動画代表の栗田氏は、「月刊ニコニコインフォ」の中で、復旧の模様なども随時、番組等を通して発信していくと話しており、この“非常事態”そのものを1つのコンテンツとして昇華させてしまおう、という意図も垣間見えた。

「転んでもただでは起きぬ」

 そんな姿勢に心強さを感じるとともに、1日も早い復旧を願ってやまない。

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