テスラ株がピークから40%下落…それでも「ハイテク株の女王」が3年後の株価“10倍超”を予想する「最大の理由」

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テスラがもくろむ自動運転のサブスクリプション

 実際に、アメリカのサンフランシスコやフェニックスといった大都市では、アルファベット(グーグル)社の事業である「ウェイモ」という自動運転タクシーが、地域限定で運行しています。

 これをテスラは、さらに大々的に行うという壮大な計画を持っているようなのです。

 自動運転タクシーが実現する頃には、一般ユーザーが保有するテスラ車も自動運転が可能となるわけです。完全に自動運転ができる車であれば、欲しがる一般消費者は少なくないでしょう。

 また、テスラはFSD利用者から、サブスクモデルで定期的な売り上げを得ることもできます。テスラが単なる自動車メーカーではなく、AI企業だと言われる所以はそこにあります。FSDにより集めたデータをAIで分析することで、他の自動車会社と一線を画す新しい収益モデルを確立することが可能となるのです。

 いずれ他社でも同じような事業を始める会社が出てくるでしょうが、テスラは“先駆者メリット”を享受するでしょう。ソフトウェア提供によるサブスクモデルは、アップルでも起きたように、テスラの利益率を高めることになり、結果的に株価を押し上げる要因になると考えられます。

 市場ではまだ、こうした展開を懐疑的に見ている投資家が少なくありません。そのため、現在の株価も伸び悩む局面が続いているのです。ただ、実際にその構想が可能だというコンセンサスが出来上がった頃には、株価は既に大きく値上がりしているでしょう。

 もちろん、ロボタクシーの実現にむけてのハードルは低くありません。政府による規制もその一つですが、先にも述べた通り、「自動運転の方が人の運転より安全である」というデータが確認されたならどうでしょう。政府が合理的な判断をするのは、もはや時間の問題になると考えています。

現在177ドルのテスラ株だが、2027年の目標株価は2000ドルとも

 多くの投資家がテスラの将来性に懐疑的であった頃から、いち早くテスラの将来性を見抜き、有名になったのがアーク・インベスト社を率いるキャシー・ウッド氏です。

 彼女は同社の株価が15ドルを切っていた、2014 年からテスラ株への投資を続け、その後2021年の年末までに、株価は約27倍にまで成長したのです。

 キャシーさんは「破壊的イノベーション」という投資で知られており、「米国の金融業界で最も影響力のある女性100人」の一人です。

 今年の5月、フロリダ州にある彼女のオフィスで、テスラの将来性について話を聞く機会がありました。

 彼女は2027年のテスラの目標株価を2000ドルとしています。現在のテスラの株価は177ドルくらいですから、ここから10倍以上の株価の値上がりを予想していることになります。

 キャシーさんによると、テスラ株が2000ドルになった際、企業価値の67%分が「ロボタクシー事業」となり、EV車の販売からくる企業価値は24%分になると試算しています。

 低コストで利益率が高いロボタクシー事業が本格化した暁には、EV車の販売を凌ぐ価値になるとみているのです。

 この分析は非常にアグレッシブな見方であり、本当に2027年にテスラ株が2000ドルまで上がるかは、その時になってみないと分かりません。ただ、株価は将来起きるであろうことを織り込みながら変動するという習性があり、本当にロボタクシーというコンセプトが実現する流れになれば、テスラ株が2000ドルに向かって上昇していってもおかしくはないのかも知れません。

 そうしたイノベーションが最初に起きるのは恐らくアメリカ、そして中国であり、新しい技術革新が日本にまで波及するのは、アメリカで一般的になった後でしょう。つまり、まだまだ先の話なのだろうと思います。

 いずれにせよ、非常に興味深い構想です。果たしてイーロン・マスク氏はそんな未来を可能にしてくれるのでしょうか。彼が8月に発表する事業計画を待ち遠しく思います。

岡元兵八郎
マネックス証券の専門役員。専門である外国株のチーフ・外国株コンサルタントのほか、マネックス・ユニバーシティ投資教育機関のシニアフェローも務める。元Citigroup/米ソロモンブラザーズ証券のマネージング・ディレクター。外国株に30年以上携わるプロフェッショナルで、関わった海外の株式市場は世界54カ国を数える。海外訪問国は80カ国を超える。米国株はもちろんのこと、新興国の株式事情にも精通している。ニックネームは「ハッチ」。Xアカウント名 @heihachiro888

デイリー新潮編集部

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