テスラ株がピークから40%下落…それでも「ハイテク株の女王」が3年後の株価“10倍超”を予想する「最大の理由」
イーロン・マスク氏率いるEV(電気自動車)メーカー最大手「テスラ」の株価が冴えない。一時は世界第7位を誇った時価総額は現在14位にまで落ち込んでいる。また、GMやフォードなど大手自動車メーカーもEV事業への投資を縮小しており、EV業界全体にも勢いを感じない。しかし、いち早くテスラの将来性を見抜いた米著名投資家キャシー・ウッド氏は、テスラへの強気な投資姿勢を崩していないそうだ。先月、実際に現地で同氏に話を聞いた、マネックス証券の岡元兵八郎氏による解説をお届けする。
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【写真を見る】テスラ最新の自動運転システムでドライブ 3時間の運転でもハンドルを握る時間はほとんどナシ
リセッションの真っ只中にある電気自動車業界
テスラの時価総額は現時点で約86兆円と、トヨタの約51兆円を凌駕するものの、昨年7月に一時290ドルを超えた株価は足もと177ドル前後で推移しています。一時は世界の株式市場の時価総額で上位7位に入り、名実ともに「マグニフィセント7」の一員として、脚光を浴びていましたが、今は14位にまで順位を落としています。
EV業界はいま、リセッションの真っ只中です。「気候変動対策」や「化石燃料依存からの脱却」というグローバルな流れの中で、GM、フォード、メルセデス・ベンツなど世界の一流自動車メーカーのCEOは、競ってEV車の開発に莫大な資金を投入してきました。
ところが、各社はこのところ投資の縮小や、プロジェクトを遅らせるといった動きを見せています。背景には、「予想したほど消費者がEV車を欲しがっていない」という事情があります。
それを表すかのように、世界で最もEV化が進んでいる中国では、値下げ競争が激化しています。2023年の米国EV市場で55%のシェアを占め、“EV業界のリーダー”と呼ばれるテスラも、中国市場では値下げを余儀なくされています。
値下げ競争の激化、という典型的な“景気後退局面”のただ中にいるEV業界。もはや、この業界は終わってしまったのでしょうか――?
私はそうは考えていません。
インフラ整備が追い付いていない
新しい技術が実際に世の中で普及するまでには、さまざまなハードルが浮上するもので、その間には“正しそうに聞こえる反対意見”がでてくるのが世の常です。
これからEV車が普及するためには、自動車会社のコストがもっと下がらなければなりませんし、ユーザーにとって十分なインフラの整備も必要不可欠です。
現在米国にはEV車の充電のためのチャージングポートが14万箇所あると言われていますが、全国民が使うには全然足りません。米国の国立再生可能エネルギー研究所は、2030年までに米国で3300万台のEV車が走ると予想しており、そのためには2800万箇所のチャージングポートが必要になるそうです。バイデン政権もEV車を普及するためのインフラ投資を行っています。
フォードのCEOは「米国でEV車を買いたいと思っている消費者の購入は一巡した」との見方を示しています。物珍しさで購入するユーザーから段階を進め、一般の消費者にEV車を買ってもらうためには、新たな展開が必要なのです。
その新たな展開のきっかけは、テスラが計画している「ロボタクシー」になるかもしれません。
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