“撮り鉄”の迷惑行為が続発も…最古の国産蒸気機関車「SL人吉」のラストランは、なぜ混乱と無縁だったのか “安全対策”につながった「超人気アニメ」とは
総勢150人強で警備
最近、よく被害を報じられているのが特急「やくも」(岡山~出雲市)だ。「やくも」は国鉄型特急車両で運行されている最後の特急ながら、新型車両273系への置き換えが進み、国鉄時代からの車両は6月14日限りで定期運用を離れることが決まっている。運行開始50年を記念したクリーム色と赤色の“国鉄色”に塗装した車両も走っており、撮り鉄にとっては“大好物”な要素が揃っているのだ。
レアな車両や引退する車両が走る沿線には、一部の悪質な輩も寄ってくる。やくも沿線では4月に人気撮影スポットで線路への立ち入りがあり、列車が遅延する事態に。読売新聞は5月11日にwebに掲載した記事で、沿線の畑で育てるブルーベリーと柿の木を何者かに刈り取られた被害があったことを報じている。
JR九州では、こうした一部の悪質な鉄道ファンが現れることを前提に、福岡県警などと連携しながら、しっかりと対策を練っていた。
JR九州営業部の担当者によれば、「博多警察署および鉄道警察隊とは今年に入ってから警備に関する話し合いを始め、イベントの1ヵ月前から警備内容を詳細に詰めていきました」
当日の警備体制は「運行する博多~熊本間の駅および踏切に総勢150人強で警備にあたりました。重点警備箇所は停車駅の博多、鳥栖、久留米、大牟田、熊本に加え、車両を留置していた吉塚駅です。このうち最も多く人員を配置したのは博多駅です」。
ファンが集まるポイントを事前に把握
同社によれば博多駅のホーム周辺には約1500人が集まっていた。安全を確保するために「警備担当として警察の方も加わっていただき、総勢50人以上の体制で対応しました」。
当日、警察側で博多駅の警備にあたったのは博多署と鉄道警察隊。双方に警察官の人数などを確認したところ「人数などの詳細については発表を控えさせていただいています。当日は私服警察官、制服警察官を配置して対応しました」とのことだった。
またホーム上は早い時間から一部を立ち入り禁止にした上で「通常の乗り降りをするお客様もいらっしゃいますので、その動線を確保しつつ、危険だろうと思われるところには人を多く配置しました」(JR九州担当者)
一方、沿線に集まるファンへの対策もしっかり練られていた。
担当者によれば、撮影のためにファンが集まりがちなポイントを、事前に鉄道写真に詳しい人から聞いていたという。また鉄道警察隊は過去にトラブルがあった場所のデータを博多警察署に提供。鉄道警察隊と博多署では、担当者が事前に現場を複数回確認した。その上でSL人吉の最終運行当日は、JR九州から提出された運行計画を元に「そうしたポイントを通過する時間は、近くの交番から警ら活動に出てもらい、パトロールを強化しました」(博多署副署長)
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