電気料金は7月から大幅値上げ…いま世界の天然ガス市場はどうなっているのか

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LNGなどの価格が落ち着いてきたと日本政府

 日本の電力大手10社は5月30日、7月請求分(6月使用分)の電気料金について値上げを発表した。全社での値上げは3ヵ月連続だ。標準的な家庭で前月に比べて346~616円上昇し、東京電力と中部電力を除く8社は現在の料金体系に移行してから過去最高水準となる。

 値上げの主な要因は、物価高騰対策として実施されてきた補助制度が6月末で終了することだ。ロシアのウクライナ侵攻に伴う燃料価格の急激な上昇を受けて、政府は昨年2月請求分から電気料金の負担を軽減する補助制度を開始していた。

 当初は1キロワット時当たり7円を補助していたが、段階的に縮小し、6月分で打ち切られることになった。終了する理由について政府は、液化天然ガス(LNG)などの価格がピーク時の半額程度に落ち着いてきたことを踏まえたと説明している。

欧州「脱ロシア」のインパクト

 日本の電源構成におけるLNG火力の比率は約34%と、最も大きなウェイトを占める。LNG価格がドルベースで低下したのは確かだが、円安による輸入価格の上昇は続いている。

 今後のLNG価格について筆者は、再び高騰するのではないかと懸念している。ロシアのウクライナ侵攻後、世界の天然ガス市場は分断されてしまった。この傾向がさらに強まる可能性があるからだ。

 ロシアからパイプラインで安価な天然ガスを大量に輸入してきた欧州が「脱ロシア」化を決定したインパクトは大きい。欧州でロシア産天然ガスに依存しているのはオーストリアとハンガリーのみだ。

 ロシアとドイツを直接つなぐ海底天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」も4本のうち3本が2022年9月に破壊され、復旧の見通しは立っていない。欧州は米国やカタールなどからLNGで供給する体制を構築しているが、調達コストの大幅上昇が起きている。

プーチン氏が北京訪問した目的

 一方、ロシアは欧州向けだった天然ガスを中国に振り向けようとしている。現在、両国をつなぐ天然ガスパイプラインは2019年に稼働した「シベリアの力」のみだが、ロシアは中国への輸出拡大に躍起だ。

 ロシアのプーチン大統領は5月16日から2日間、中国の首都北京を訪問した。主な狙いは中国とのエネルギー協力のさらなる拡大だ。

 具体的には、ロシアからモンゴル経由で供給する新たなパイプライン「シベリアの力2」についての契約締結だった。これにより、ロシアから中国への天然ガス輸出量は2倍となり、失った欧州向け需要をほとんどカバーできることになるからだ。

 だが、ロシア側の期待は空振りに終わった。中国がロシアの足元を見て法外な要求をしていることが足かせとなっている。

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