【虎に翼】朝ドラ110作目で初 「同性愛」を描いた意味 数字が示す意外な真実とは
名古屋の10代の人気は突出
しかし、F1層(20~34歳の女性)の同時期の個人視聴率の平均は「虎に翼」が1.44%で「ブギウギ」は1.06%。かなり差が付く。
さらに登校直前の放送にもかかわらず、「虎に翼」は10代がよく見ているのが特徴だ。13~19歳の個人視聴率であるT1層の平均値は2.16%もある。「ブギウギ」は同1.76%だった。
ちなみに6月7日放送のフジテレビ「イップス」(金曜午後9時)のT層は0.2%、TBS「9ボーダー」(同10時)は同1.9%。T層がプライム帯(午後7時~同11時)のドラマより朝ドラを観るというのは極めて珍しい。
「虎に翼」は70年以上前の話でありながら、現代性を持たせているので、それを批判する向きもある。しかし、朝ドラに限らず、ドラマは現代性がないと視聴者が受け入れない。1年間を通じての平均世帯視聴率が52.6%に達した伝説の朝ドラ「おしん」(1983年)もバブル前夜の拝金主義に警鐘を鳴らしたから広く受け入れられた。
「おしん」は75カ国・地域に輸出されたが、その大半がアジアやアフリカの途上国。主人公・おしんが苦労の末に成功する物語は途上国にとっては現代性があったのだ。
「あまちゃん」(2013年度上期)もそう。11年に起きた東日本大震災の被災地に寄り添い、アイドル文化という現代性を採り入れたから熱狂を生んだ。時代と合致しないとドラマはヒットしない。
「虎に翼」の個人視聴率の地域差も見てみたい。関東の最高は5月31日に放送された第50回の10.1%(世帯18.0%)。寅子が夫の優三(仲野大賀)を失った悲しみを乗り越え、家族会議で自分が家族を支えると宣言した回である。
同じ日の関西は個人8.1%(世帯15.4%)。この朝ドラは東京でつくられているが、関西は大阪での制作でないと視聴率が低くなる傾向がある。
名古屋は個人10.6%(世帯18.3%)。関東を上回った。驚異的なのがF1の数値だ。5.9%を記録した。この日名古屋で放送された全番組の中で断トツだった。(ここまで視聴率はビデオリサーチ調べ)
もともと名古屋は朝ドラと大河ドラマへの支持が厚い。そのうえ、名古屋市内の市政資料館(旧名古屋高等・地方裁判所)が裁判所の撮影に使われているから、ご当地ドラマ意識もあるのではないか。
市政資料館は1922年から79年まで裁判所として使われた。歴史的文化価値が高く、建物は国の重要文化財に指定されている。
「虎に翼」の放送開始後、見学者は昨年と比べ倍増した。この朝ドラのヒットが本物であることの表れの1つだろう。
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