【虎に翼】朝ドラ110作目で初 「同性愛」を描いた意味 数字が示す意外な真実とは

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もともと性差に拘らない轟

 振り返ると、轟が同性愛者であるという伏線らしきものはあった。明律大時代の1935年だった第19回、花岡はハイキング中に寅子と 口論となり、崖から転落したため、寅子への仕返しを考えた。これに轟は激高。花岡の頬を激しく打った。

 さらに轟は寅子やよねら5人の女性の同級生について、花岡に向かってこう評した。

「オレが男の美徳と思っていた強さ、やさしさをあの人たちは持っている。オレが男らしさと思っていたものは、そもそも男とは無縁のものだったのかも知れんな」(轟)

 轟は初登場時の第16回では男性のイメージを体全体で現していたが、その後、性差について進歩的な考えの持ち主になる。性別の垣根が低かった。

 性的マイノリティも差別されてはならない――。脚本を書いている吉田恵里香氏と制作統括の尾崎裕和氏はそう訴えたいのだろう。2人は岸井ゆきのと高橋一生がダブル主演した連続ドラマ「恋せぬふたり」(NHK・2022年)でも組み、性的マイノリティのアロマンティック・アセクシュアル(恋愛感情も性的欲求も持たない)の男女を描いた。

「恋せぬふたり」は高い評価を受け、2021年度のギャラクシー賞テレビ部門特別賞、22年度の文化庁芸術祭優秀賞を受賞した。また、吉田氏は脚本界の最高峰である向田邦子賞を史上最年少の34歳で得た。

 平等を定める第14条がテーマの「虎に翼」で性的マイノリティを取り上げるのは、吉田氏と尾崎氏にとっては当然のことだったのだろう。いや、描かなくてはならないことだと考えたのではないか。

 この朝ドラには、朝鮮人であることから不快な思いをさせられた明律大の同級生・崔香淑(ハ・ヨンス)や華族であるために息苦しさを感じた同じく同級生の桜川涼子(桜井ユキ)らが登場する。偏見によって生きづらさをおぼえる人たちに寄り添い続けている物語なのだから。

「虎に翼」は女性と男性の不平等問題を始め、現代性が強い。このため、朝ドラの岩盤支持層である50代以上の女性だけでなく、若い視聴者にも人気がある。この類の話は思い込みに支配されやすいため、エビデンスを示したい。

 まず6月3日から同7日(第10週、第46~50回)の個人視聴率の平均値は関東地方で9.38%(世帯視聴率16.7%)。昨年12月4日から8日に放送された「ブギウギ」(第10週、第46~50回)の平均は個人9.32%(世帯16.2%)なので、大きな差異はない。

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