【虎に翼】朝ドラ110作目で初 「同性愛」を描いた意味 数字が示す意外な真実とは
花岡が好きだった轟
朝ドラことNHK連続テレビ小説「虎に翼」の第51回で、主人公・佐田寅子(伊藤沙莉)にとって明律大の同級生である弁護士・轟太一(戸塚純貴)が、やはり同級生で裁判官だったものの、餓死した花岡悟(岩田剛典)が好きだったことが明かされた。110作目となる朝ドラが同性愛を描くのは初めて。その意味を考える。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】
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轟は花岡が好きだった。明律大の同級生で男装の山田よね(土居志央梨)はそれを見抜いていた。
予想外の展開だったものの、意外ではなかった。この朝ドラのテーマは「法の下の平等」を定めた憲法第14条。同条の文言にはないが、性的マイノリティも平等であることを描くのはごく自然なことに違いない。
終戦から2年後の1947年、よねは轟に向かって、まず第14条を得られた思いを吐露した。
「ずっと、これが欲しかったんだ、私たちは。男も女も人種も家柄も貧乏人も金持ちも、上も下もなく、横並びである、それが大前提で、当たり前の世の中が」(よね)
直後、よねは轟に対し「惚れてたんだろ、花岡に」と指摘した。よねは轟と 最後に花岡と会ったときに気づいたという。すると、1940年だった第33回だ。花岡が赴任先の佐賀地裁から一時帰京した際である。
よねの言葉を受けた轟は当初、「何をバカなこと言ってるんだ」と強く否定した。だが、やがて「あの戦争の最中、あいつが判事になって、兵隊に取られぬと思うと、うれしかった。あいつのいる日本へ生きて帰りたいと思えた……」と涙ながらに告白する。
東京地裁判事だった花岡は経済犯担当者としてヤミ食糧に関する事件を裁いていたため、自らを厳しく律し、ヤミ食糧を口にせず、餓死した。轟はそれを酷く悲しむ一方で、半ばあきらめていた。
「オレがずっと前から知ってる、真面目でやさしくて、不器用が過ぎる花岡なら、やりかねん……」
花岡が好きだった轟だから、その思想や行動を読み尽くしていたのだろう。
一方、よねはどうして轟の思いが分かったのか。15歳になる前にろくでなしの父親によって売られそうになったため、「私、女やめる!」と叫びながら髪を切り、その後は男装で暮らしてきたが、だからではないか。
よねも同性愛者なのかどうかは分からない。しかし、男装を貫き、マイノリティとして生きてきる。このため、同じマイノリティである轟の心情を敏感に酌み取ったと見る。
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