ドリカム中村が明かす35年の軌跡 「300曲あるとすれば290曲は聴かれていない。トップ10の曲でドリカムは成り立っている」
「ウラワン」で神保彰をゲストに
そんなドリカムが「ドリカムワンダーランド」と対をなすライヴで、隠れた名曲を聴かせる「裏ドリカムワンダーランド」(通称「ウラワン」)が9月22、23日のさいたまスーパーアリーナ(埼玉県さいたま市)を皮切りにスタートする。スペシャルゲストドラマーとして神保彰を迎えることも話題だ。
「もともとドリカムはドラムのいないバンド。だけどドラムは僕にとっても吉田にとってもサウンドの核という認識がある。基本は打ち込みでやっているが、だからこそ、僕や吉田が憧れたドラマーと一緒にやりたいという思いは強い」と説明する。これまでにも村上“ポンタ”秀一、ハーヴィー・メイソン、ソニー・エモリー、クリス・コールマン、坂東彗ら綺羅星のごときドラマーを迎えたライヴを行ってきた。
「神保さんと僕は同い年だけど、フュージョンバンドをやってきた者としてはずっとトップを走ってきた憧れのドラマー。お互いに65歳になって初めてできること。10年前かというと違っていて、今だからじゃないかな」
隠れた曲の持つチャンス
「ウラワン」は、ファンが聴きたい曲を並べる「ドリカムワンダーランド」と対をなし、ドリカムが聴かせたい曲、隠れた名曲が並ぶライヴというコンセプトだが、「楽曲配信の時代になってから、隠れた曲 がもう一度日の目を見る機会が格段に増えたと思っています」と中村は指摘する。
すなわち、かつて200万枚以上売れたアルバムでも「CDだと隠れた曲 は隠れたままで終わっていた」。楽曲配信なら、どの曲も区別なくずらりと並べられ、大ヒット曲と同等に目が行く可能性が少なからずあるためだ。
実際、自身の事務所を立ち上げ、音楽出版会社も運営する中村には、どの曲が何回再生されたか、あるいは、JASRACによるデータなど、「どの曲がどれぐらいマネタイズされたか」というのは逐一分かるという。その中で「ドリカムの曲が300曲あるとすれば、290曲は聴かれていない。トップ10の曲でドリカムは成り立っているんです」と説明する。
サブスクサービスごとに売れる曲の特性もあるといい、「あのサブスクではこの曲、こっちではこれ、というのがあって面白い。どのサブスクでも聴かれる曲、たとえば「何度でも」などは1億再生超えになっている」と話す。
「吉田の仕事が新しい曲を書くこととすれば、僕の仕事は聴かれていない290曲に日を当てること」と断言。その意味では「今度のウラワンでの選曲は、10年や20年やっていない曲がザラにある中で、吉田の口から生で聴ける最後のチャンスかもしれない」と指摘する。若い頃ならネガティブに捉えられるかもしれない発言だが、2人の年齢を考えれば、今回の選曲の貴重さが十分に納得できるはずだ。
しかも、隠れた名曲とはいえ、決して演出が地味になることはない、ドリカムのウラワン。「それを踏まえた上で、ウラワンがどういう到達点にたどりつくかを楽しんでほしい」と中村は自信を見せる。
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