NHK朝ドラ「ヒロインはどう決めるのか」「ギャラは本当に安いのか」…テレビ業界のナゾについて当事者に聞いた
朝ドラのヒロインは制作統括が決める
テレビ界についてはまだ謎や誤解がある。たとえば「朝ドラことNHK連続テレビ小説のヒロインはどう決めるか」「NHKのギャラは本当に安いのか」「視聴率が悪いと、どんなことが起きるのか」。当事者に真実を聞いた。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】
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まずは朝ドラのヒロインの決め方から。「NHK内でドラマ制作経験のある幹部たちの合議によって決まる」との説が一部にある。本当のところはどうなのだろう。
「主演を合議で決めるドラマなんて、朝ドラに限らず、ありません。朝ドラの場合、まず放送の約2年前に制作統括が決まります。民放で言うとチーフプロデューサーで、制作陣のトップです。制作統括が脚本家を決め、次にヒロインを選ぶ。作品概要の発表は放送の約1年前です」(朝ドラの制作統括経験者)
ヒロインも脚本家も制作統括の裁量で決まるわけだ。
「ヒロインと脚本家の人選はドラマを担当するメディア総局第3制作センターの幹部に報告しますが、却下されることはありません。そもそも信頼されているスタッフが制作統括に指名されるのですから」(同)
制作統括の裁量権が大きいから、その過去の作品群を眺めると、誰がヒロイン、脚本家になるのかがある程度、分かる。制作統括は自分が信頼し、評価する女優と脚本家を起用するからである。
たとえば伊藤沙莉(30)が「虎に翼」のヒロインを務めると発表されたのは2023年2月。その半年前、制作統括の尾崎裕和氏はスペシャルドラマ「ももさんと7人のパパゲーノ」(22年8月)でも伊藤を主演に起用した。このため、放送担当記者たちは「尾崎氏がつくる朝ドラのヒロインは伊藤で決まり」と予測していた。
前出・朝ドラの制作統括経験者によると、尾崎氏は「ももさんと7人のパパゲーノ」によって、伊藤の演技力の高さをあらためて確信したという。伊藤も朝ドラへの試金石だと分かっていたはずだ。伊藤はこの作品で文化庁芸術祭テレビ・ドラマ部門の放送個人賞を獲った。
尾崎氏は「虎に翼」の脚本家・吉田恵里香氏とも2年前に組んでいる。岸井ゆきの(32)と高橋一生(43)がダブル主演した連続ドラマ「恋せぬふたり」(2022年)である。この作品はありとあらゆるドラマ賞を獲得した。尾崎氏が朝ドラで吉田氏と組むのは自然な流れだった。
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