「弁護士費用などで200万円は使った」「SNSのパスワードを勝手に変えられ…」 被災地の「輪島朝市」で泥沼内紛が
「弁護士費用などで200万円ほどは使った」
能登半島地震から5カ月が過ぎた。徐々に被災地は復興への歩みを進めているが、立て直しが重要なのは生活インフラや建物だけではない。能登のシンボル「輪島朝市」では組合員が訴訟合戦、互いをののしり合う泥沼内紛の最中にある。“絆”の復興はいつ――。【前後編の後編】
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前編では、NPO法人「輪島朝市」の幹部であるA氏、「輪島朝市組合」の前組合長であるB氏の証言を紹介しながら、朝市が二つの勢力に分かれて訴訟合戦となっていることを報じた。
実は輪島市では両者のトラブルは広く知られている。訴訟沙汰が始まった年には朝市の観光客が右肩下がりだったこともあり、当時の市長が「観光振興に都合が悪い」と苦言を呈したほどだが、では、今度は“逆側”の言い分はいかがか。
「NPOの言っていることは事実に反します」
と反論するのは、告発された側のトップ、「輪島朝市組合」の冨水長毅(とみずながたけ)組合長である。
「そもそもトラブルの発端となった法人化の件も、商標登録自体は多くの組合員が賛成でした。ただ、申請は商工会議所を通してでもできるし、NPOを作ると朝市に関わる団体が二つになってしまう。何よりそうしたことを議論しなくてはいけないのに、B氏と理事がどんどん進め、先に新聞記事まで出てしまっていた。そうした運営手法に待ったがかかり、その後の結果になったというわけなのです」
訴訟合戦に関しては、
「こちらは正当な手続きを取っているのに彼らはどんどん訴えてくる。裁判でわれわれを疲弊させるのが狙いなのでしょう。私個人も弁護士費用などでもう200万円ほどは使っています。ひどいなと思ったのはSNS。もともと組合のSNSはNPO側のメンバーが作ったものでした。だから除名されて以後、向こうはパスワードを変え、僕らが自由に更新できないようにしてしまった。で、今はそれをNPOのSNSに変えてしまっています」
「申請があり次第払う」
ため息をつきつつ、 義援金が正しく分配されていないというNPO側の主張についてはこう説明する。
「震災直後、弁護士さんから“今後、義援金の問い合わせが来るからその受け皿を用意しておいた方がいい”とのアドバイスがあった。しかし、組合員は多くが被災し、連絡も取れない。正式な意思決定ができないので、まずは動ける人を中心に『輪島朝市を応援する会』を立ち上げ、そこで義援金を募ることにした。振込口座も弁護士さんに作ってもらいました」
支払われない人がいるのではとの疑問にも、
「そんなことはないでしょう。連絡がつかなかった人には確かにまだ支払っていませんが、それは申請があり次第支払います。ただ、組合員ではない方には支払えませんが……。出張朝市についても、まずは動ける組合員だけで行っているということです」
「応援する会」の発起人の一人も、
「組合員であればお断りすることはない」
と、決してメンバーを選別しているわけではない、と反論するのだ。
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