「義援金5万円が分配されていない人も」 被災地の「輪島朝市」で泥沼内紛が起きていた
敗訴すると、逆襲が
トラブルの発端は2019年。組合員以外の商店主が、東京や岐阜などの各地で「輪島朝市」を名乗って店を出したことが発覚したのだという。
当時、A氏は組合の理事の一人であった。
「何かあったら組合は責任が持てないし、『輪島朝市』の名は地域の重要な資源ですから、きちんと管理していくべきだという声が強まりました。そこで、組合で『輪島朝市』を商標登録する話が出てきました。が、商標は法人格がないと申請できません。そのため、組合を主体として新たにNPO法人を作ることを検討しました」
A氏と当時の組合長・B氏が中心になり、この案が理事会に提出された。しかし、
「25名の理事のうち2名反対者が出た。彼ら2名はその前から私たちに対して“組合の事業で利益誘導している”などと誹謗中傷し、その時も“NPO化で彼らにお金が入る仕組みになっている”などとビラを配ったりしたんです。後の総会でも同様の主張をし、法人化案は結局、保留に。あまりに混乱を招いたので、理事会で二人の除名が決まったのです」
するとこの二人は、処分を不服とし、金沢地裁に地位確認の訴訟に打って出た。翌2020年、一審判決で組合が敗訴すると、今度は逆襲が始まったという。
「二人は組合に戻った。そして敗訴した当時の執行部に代わって、二人と近い、新しい組合長が誕生し、その翌年、私とB氏は理事を解任されることになったんです。でもその手続きには大きな問題があったので、私たちは解任の無効を求める裁判を起こした」
「義援金が分配されていない人も」
そこから先は両者の間で訴訟に次ぐ訴訟となる。
一方が一方を中傷したという名誉毀損裁判から、組合が追い出した側に道路占有許可を出さなかったことを巡る訴訟、はたまた乱発する裁判の費用支払いを巡る訴訟――その数は10件を優に超えるといい、一部はいまだに係属中だ。こうなれば関係修復は不可能だが、さらに、である。
2021年、前組合長とこの幹部はNPO法人「輪島朝市」を設立し、そこには15名ほどの組合員も参加した。すると、
「今度は組合側が“先に商標登録をされたらまずい”と、市の商工会議所に委託し、『輪島朝市』の商標登録を申請したんです。そこで私たちのNPOも、商標登録を申請しました」
商標を取り合う争いは現在、特許庁が審査中。また、昨年、A氏とB氏は組合を除名されている。
そんな対立が続く最中に起きたのが、この元日の大地震だったものだから、復興を巡り、両者がさらにヒートアップするのは当然のなりゆきだ。
「震災後、組合側は『輪島朝市を応援する会』なる組織を作って、義援金を募り始めた。しかし、それは現組合長の取り巻きの一部の人たちだけで作っているんです。本来はきちんと議論して進めなければいけないはずなのに、一般の組合員は蚊帳の外。そこに既に1000万円以上義援金が集まっていて、『応援する会』は組合員に1人5万円ずつ分配すると言っていますが、それも好き嫌いで決めている。実際、私たちのNPOに入っている組合員は“敵”と見なされ、分配されていない人もいるんです」
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