あの日、僕の人生観が変わった。体の奥からマグマが噴出するように…妻から「変態!」と罵られた47歳夫の苦悩
離婚するかしないのか
謝ればいいのか、どうすればいいのか亮吾さんにはわからなかった。とにかくふたりで話そうと、その日は自宅に戻った。どこから話せばいいか迷ったが、とにかくその道を知って自分は生きる意欲がわいた。自分が求めていたのはこれだったのだとわかった。恋愛感情が抱けず、人に向ける性的欲求も薄いが、SMだけは没頭できた。これはこれで奥が深いんだと彼は必死で説明したが、妻は聞いているのかいないのかわからなかった。
「『私たち、もう何年もレスなのよ、相手にしてもらえない私の寂しさがわかる?』と麻央はせつなそうに言いました。自分が妻を傷つけていることに初めて気づいた。これ、不倫より悪いわ、と麻央は吐き捨てるように言った。それで僕も傷つきました」
折に触れて話し合った。だがお互いにわかり合うことはできない。離婚するしかないのかと思ったとき、妻がつぶやいた。
「私は家庭を壊したくない。そのことを除けば、あなたとの生活は決して悪いものではない。だからあなたはこれまで通りにすればいい。私も好きなようにする。お互いに家庭を壊さない範囲で、別の方向で楽しみましょうって。浮気すると宣言しているのかと聞いたら、『それはわからない。ただ、何があっても息子が成人するまでは家庭を守るし、あなたと諍いもしたくない』と。それには合意するしかありませんでした」
彼の趣味は変わらず続いている。妻は月に1,2度帰宅が遅くなることがある。誰かとデートしているのかどうかはわからない。お互いに遅くなる日だけを知らせ、知らされたほうはよほどのことがない限り早く帰宅するという約束ができあがっている。
「妻の実家も、あのことはなかったことにしてくれているのか、まったく蒸し返そうとしません。でもあれ以前のように自然には振る舞えなくなった。義父母もどこかギクシャクしていますね。かといって今さら正面切って説明もできないし……」
自分が没頭できることに巡り会えたのは彼にとっては幸せなことだ。だが、知ってしまった妻の気持ちを思うと、手放しでよかったねとも言いづらい。
誰に迷惑をかけているわけでもないのに、なんだか肩身が狭い。妻の「変態」という叫び声は今も耳に焼きついています、と亮吾さんはうつむきかげんに小声で言った。
【前編を読む】「苦しかった人生を抜け出す方法が見つかったのに、今はそれを妻に咎められてます」47 歳夫の告白 “エロスの深さを知った果てに…”
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