あの日、僕の人生観が変わった。体の奥からマグマが噴出するように…妻から「変態!」と罵られた47歳夫の苦悩

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“麗子さま”との世界は崇高

「あ、すみません。こんな話、興味ないですよね」

 途中で気を遣ってくれつつも、彼のSM談義は続いた。本人が楽しいと思うことを見つけたなら、それはなによりだ。

「僕には心のパートナーである女王さまがいるんです。麗子さまというんですが、彼女に弄ばれるのがいちばん興奮する。彼女に個人的にプレイしないかともちかけて、店の近くのホテルで相手をしてもらうこともあります」

 でもセックスはなしです。僕らの世界は崇高なんです、麗子さまとは魂がつながっているんですと彼は必死になって言った。だから不倫ではないのだ、と。確かに恋愛感情を持たない彼が、女王さまとプレイをしたからといって「不倫」というのは当てはまらないような気もする。ただ、妻がそれを知ったらどう思うだろうか。

「そうですよね。自分の趣味が麻央とは違うとわかっていたし、彼女を傷つけたくはなかった。だから麻央には絶対に知られないようにしなくてはと気をつけていました。縄もお店に置いてもらうよう頼みました。だんだんエスカレートして、もうちょっとエグい器具も手に入れたので、それらもすべて店に置いてもらった。他店には行かないという忠誠心の証でもありますし」

「この変態!」と叫ぶ妻

 ところが今年のゴールデンウィーク直前のこと。帰宅すると、妻と息子がいなかった。実家に行っているのだろうと思ったが、いつもなら実家にいると連絡が入るはず。麻央さんにLINEをすると「今日は顔を見たくない」と返信があった。

 気になって麻央さんの実家に行ってみると、家の中の雰囲気がおかしい。いつもなら誰かがしゃべったり笑ったりしているのに、みんな亮吾さんの顔を見て固まっているのだ。

「どうしたのと言ったら、麻央がいきなり、『この変態!』と叫んだんです。思わず息子を目で探すと、『息子はもう寝たわよ』と麻央。彼女はスマホを僕に見せてきました。そこには水着一丁で吊り下げられて恍惚となっている僕がいた。恥ずかしかったですね。でも同時に興奮してもいました。いつかこうやって妻に辱められたいと思っていたのかもしれない」

 妻が怒っているのに、亮吾さんはそんな悠長なことを思っていたようだ。その道のことなどわからない人にとっては、確かに「変態」かもしれない。だが、変態と言われた彼は少しうれしかったのだ。この違いは大きい。

「どうしてわかったのかというと、妻の友だちが好奇心からこの店に行ったんだそうです。女性客もいますから。そうしたら僕がいた。彼女はそれが麻央の夫だとは知らずに、こっそり写真を撮って『こんな人がいたのよ』と麻央に見せたというわけです。麻央は最初、信じられなくてひとりで悶々としていたそうです。でもどうしても知りたくて、店に電話をかけて僕がいるかどうか尋ねてみた。そうしたら『亮吾ちゃん、今日は来てませんね』と言われたって。苗字を言っただけなのに、そうやって名前で答えたの。よほど常連客なんだとわかった、と」

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