あの日、僕の人生観が変わった。体の奥からマグマが噴出するように…妻から「変態!」と罵られた47歳夫の苦悩

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【前編を読む】「苦しかった人生を抜け出す方法が見つかったのに、今はそれを妻に咎められてます」47 歳夫の告白 “エロスの深さを知った果てに…”

 藤枝亮吾さん(47歳・仮名=以下同)は、都内の裕福な家庭に育った。優秀なふたりの兄と比べられたために肩身が狭く、大学に入学すると早々にひとり暮らしを始め、実家が営む企業とはべつの中堅会社に就職した。職場の先輩から紹介された2歳年下の麻央さんと結婚し、彼女の実家とも良好な関係を築いたものの、うまくいかないことがひとつだけあった。妻を大事に思う気持ちはあっても恋愛感情が湧かず、夜の営みに関心をもてないのだ。「オレってどこかおかしいんだろうな」という亮吾さんの思いは強くなる一方だった。

 ***

 それでも麻央さんは妊娠し、37歳のとき亮吾さんは男の子の父になった。麻央さんの両親や妹に助けられながら、ふたりは子どもに夢中になった。子育てほど楽しいものはないと亮吾さんは言う。子どもは神秘の生き物、着実に、すごい勢いであらゆるものごとを吸収していくんですと彼は顔を輝かせた。

 ふたりとも特に息子に期待することはないという点で意見は一致していた。元気で、本人が望む道を歩んでほしい。好きなように生きろ、と亮吾さんは常に思っていた。

 2年ほど前、息子が小学校に入ったころ、亮吾さんに大きな発見と転機が訪れた。

「ある日、久々に学生時代の友人2人と会って飲んでいたら、ひとりが『おもしろいところへ行ってみないか』と言いだしたんです。それがSMクラブだった。ここで僕の人生観が変わりました」

 3人で店に行ってみると、ちょうどMの男性が吊り下げられて女王様から鞭を「いただいている」ところだった。その光景を見て、亮吾さんは体中に電気が走ったような気がしてめまいがし、ふらついた。

「おい、大丈夫かと友人が支えてくれた。『いや、ごめん。刺激が強くて』と冗談でごまかしましたが、本当はクラクラするほど性的欲求を感じていたんです。僕が吊り下げてもらいたい、鞭で打たれたいと真剣に思った。思ったというより、体の奥からマグマが噴火するみたいに『何か』がわき起こってきたんです」

 どうしたらいいかわからなかった。とにかく自分の居場所はここだと痛切に思った。だが、さすがに友人たちの前で自分の欲求をさらけ出す勇気はなかった。だからその日は、女王さまたちと世間話に興じただけで帰宅した。

「それから必死でいろいろ調べ、道具を買ったんです。まずは縄を買って、自分の体を縛ってみた。それだけで頭がおかしくなりそうに興奮しました」

いきなり饒舌になる亮吾さん

 コロナ禍で自宅での仕事が増えたため、彼は納戸を書斎として使っていた。鍵のかかるひき出しに縄を隠し、夜中、彼は自分を縛る稽古を重ねた。あのSMクラブに行って、自分で自分を縛るところを女王さまに見てほしかったのだ。縛られるより自分で縛りたい、そこだけは譲れないと彼は考えたという。

「自分の意志を放棄して、縛ってもらうことに快感はないんです。自分で縛るのを見守ってもらいたいというか」

 半年後、彼はついにうまく自分を縛ることができるようになった。意気揚々とSMクラブに出向いて、女王さまたちにお願いしてみた。

「やってごらんと言われ、まあまあだねとかまだまだだねとかいろいろ言ってもらって、最後は鞭打たれて放置されて。なんかね、もう、ぶっ飛ぶんですよ」

 聞いているこっちもぶっ飛びそうだった。それまでの亮吾さんとは別人のような饒舌さ、明るい表情に驚かされた。今までの人生、なんてつまらなかったんだろうと彼は思ったそうだ。

「週に2回は通いました。縛り方のあれこれも教わっては稽古して。店での知り合いもできて、SM談義に花を咲かせて。人それぞれ、いろいろな嗜好、志向があるのがこの世界なんだと教えてもらいました」

 彼は吊り下げられて放置され、激しく鞭打たれ、飽きてきたころに「かっこ悪い」「無様ねえ」と女王さまたちに悪口を言われるのが、この上なく好きなのだそうだ。痛みと恥辱を快感に変えることができる彼は、かなり真性のMではないか。

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