「苦しかった人生を抜け出す方法が見つかったのに、今はそれを妻に咎められてます」47 歳夫の告白 “エロスの深さを知った果てに…”

  • ブックマーク

「恋愛感情」を持っていない

 だが一方で、今ひとつうまくいかなかったのは性生活だ。亮吾さんに性欲がなかったわけではないが、セックスの楽しさは知らない。麻央さんはそれなりに恋愛をしてきたから、夫の「奥ゆかしさ」に歯がゆい思いをしていたようだ。

「あるとき、麻央が『ねえ、私が好むセックスをしてくれる?』と言いだしたんです。ごめん、下手でと口ごもると、『そういうことではないの。私には私の好みがあるから。あなたにはあなたの好みがあると思うから、それをちゃんと伝え合おうよ』って。大人ですよね、彼女は。ただ、僕は恋愛感情が生まれないのと同時に、どうも普通のセックスって気が乗らないんですよ。でもそうとは言えなかったから、彼女の指示に従ってがんばることにしました」

 根掘り葉掘り聞いてみると、麻央さんが特別高度なテクニックを求めていたわけではない。女性の体を丁寧に扱ってほしい、気持ちを込めて愛撫してほしいといったごく基本的なことばかりだ。彼は麻央さんを大事に思っているのに、セックスの場面ではどこかぞんざいになってしまっていたらしい。つまりは女性慣れしていなかったのと、やはり「妻との愛情確認と心の交流」に強い情熱を注ぐことができなかったのだろう。

「人と人という意味で麻央のことは心から信頼しているし、そういう意味では愛情はあります。この世でいちばん愛している存在だと思う。でも麻央を女として見ているかと言われると自信がない。そもそも女とか男とか分けて考えていないし……」

 おそらく、彼は一般的な意味での「恋愛感情」をやはり持っていないのだろう。LGBTQなどの解釈によれば、他者に恋愛感情を抱かない人を「アロマンティック」というが、彼はそれに当てはまるのかもしれない。性的欲求がない人を「アセクシュアル」と呼ぶが、亮吾さんに性的欲求がまったくないわけではない。

「性的欲求はあるんだけど、射精欲求がないというか。性欲と射精が結びつかない。やはりどこか性的に“普通”ではないんでしょうね。麻央に手ほどきを受けながら、それなりにできるようにはなりましたが、それはそれで僕にとっては楽しくなかった。麻央が喜んでくれるからするだけで、それが僕の喜びにはならなかったんです。オレってどこかおかしいんだろうなという思いはどんどん強くなりました」

【後編を読む】あの日、僕の人生観が変わった。体の奥からマグマが噴出するように…妻から「変態!」と罵られた47歳夫の苦悩

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。