【デビュー55周年】ちあきなおみと運命の人「郷鍈治」はどんな関係だったのか 元マネージャーの証言

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 今年6月10日でデビュー55周年を迎えた歌手・ちあきなおみ。それを記念してアルバム発売や特番の放送に加え。デビュー日の10日には、かつて彼女が在籍したレコード会社3社から300曲以上のダウンロード配信が開始 される。節目の日を前に、ちあきの活動停止を挟んで8年間、マネージャーを務めた古賀慎一郎氏(57)が、あらためて「歌手・ちあきなおみ」の魅力を多くの人に知ってもらいたいと、本人から聞いた思い出や秘話をもとに、デイリー新潮に手記を寄せた。前編では生い立ちから歌手を目指すまで。今回は、“運命の人“との出会いを綴る。(前中後編の中編)

歌謡界の頂点に立つ

 晩秋の海にて。その人は小さい貝殻を集めて人の顔を描き、頬ずりするように顔を近づけた。

「郷さんが助けてくれたの。私にとって彼は私自身だった……」

 私は横切って行く小舟に手を振りながら、その人から離れ砂浜を歩き、「ちあきなおみ、あなたはいい人だね」と、ひとり呟いた――。

 ***

 1969(昭和44)年6月10日、ちあきなおみは「雨に濡れた慕情」でレコードデビューを果たしてから、瞬く間にスター歌手への階段を駆け上がる。70年「四つのお願い」で紅白初出場、71年には日劇で初のワンマンショー、テレビドラマやバラエティ番組にも出演し活動の幅を広げてゆく。

 そして1972(昭和47)年、「喝采」で「第十四回日本レコード大賞」を受賞し、歌謡界の頂点に立つ。このとき二五歳、デビューから僅か三年目の快挙であった。しかしその後、ヒットをよそに「このままでは私はダメになってしまう」と、当の本人は危機感を抱いていたという。

 この頃の彼女の神経は、多忙極まる仕事をこなす傍らで、刃を研ぐ時間さえ奪われたように鋭敏さを欠いてゆき、その身体は悲鳴を上げていたのである。

 だが、それでも彼女は昨日、今日、明日と、それぞれの時間の中で、仕事として歌う自分を懐疑し、自身の歌のあるべき姿への渇望と歌謡界の商業主義との狭間に、かろうじて踏みしめる途がないものだろうかと、模索を繰り返す日々を紡いでいた。

 そんな折、彼女の前にあらわれたのが、俳優である郷鍈治だった。

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