「わが社のプロジェクトX」失敗の要因として最も出てくる低レベルな中身とは

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失敗するとすれば

 NHKで「プロジェクトX」が18年ぶりに装いを新たに放送されているが、いつの時代も成功物語は多くの人を引きつけるところがあるのだろう。ただ、失敗は成功の母という言葉を持ち出すまでもなく、成果を出すまでには数多くの汗と涙と失敗が重ねられているのもまた事実だ。もっとも、だからといっていたずらに失敗を重ねる必要はない。失敗を織り込みつつ、ゴールへのルートを考えるのが常道だろう。

 ところが、現実の企業では往々にして、失敗をきちんと想定していないために、迷走してしまうケースが珍しくない。当然、そんなプロジェクトは失敗に終わる。「プロジェクトX」と「ポンコツ・プロジェクト」の差はどこにあるのか。

 経営コンサルタントの菊池明光さんは、数多くの企業での実例を見た経験から、かなりレベルの低い要因が、「失敗要因ランキング」上位にあることに気付いたという。菊池さんの新著『とにかく可視化 仕事と会社を変えるノウハウ』(新潮新書)からその「失敗の要因」の解説を見てみよう(以下、同書をもとに再構成)。

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 ビジネスにおける打ち手を考える時は通常、「うまくいくこと、成果が出ること」を前提に動くことでしょう。ただ、一方で「もしもうまくいかない、失敗するとすれば、どんなボトルネック・リスクが想定されるのか?」といった視点を持つというのも大事なことでしょう。

失敗要因ランキングのワースト1は

 常に最悪を想定して企画立案するのは危機管理の要諦とされていますが、そこに気付かないまま打ち手を乱発して仕事をした気になっている経営層やマネジャークラスを多く見てきました。総じてそういう人は成果を創り出せる確率が低いように感じます。

 私の経験上、あらかじめ想定できた「失敗要因ランキングのワースト1」は「時間がなかった問題」です。身もふたもないことかもしれませんが、実はそうなんです。

 何をどこまでやりたいのか、どんな成果を得たいのか設計したにもかかわらず、何にどのくらい時間がかかっているのか工数分析をしなかった。そのために、実際にやり始めたら他の業務で手いっぱいで今回の打ち手に対する優先順位が下がってしまったということなのでしょうが、とにかく残念ですね。

 そもそも打ち手を立案する際に行われたはずの精緻な議論はどこへ行ったのかと言いたくなりますが、これが本当に多いのです。「時間がなかったからできませんでした」と振り返ることほど虚しいものはありません。

同率ワースト1は

 続いて、「急きょ業績目標を追いかけることになり、そっちが優先になってしまった」も同率ワースト1と言っても過言ではない理由・敗因です。

 こうなると、そもそもどういう事業計画を作っていたのか、甚だ疑問に感じますね。業績計画策定時にそれがうまくいかない場合のリスクも洗い出して、そこに対しても適正労働時間内、適正工数内で実現できる打ち手を投じておけばよかったのではないでしょうか? 

 もちろん、顧客の都合で突然大きな受注が無くなるという事態が発生する可能性はありますが、打ち手実行の工数をすべて奪うほどのことになるとは考えにくい。これが起きてしまう企業の共通点は、「御用聞き・受け身型のニーズ対応専門営業をメインとしていて注文が勝手に来てしまうモデルで長年成功してきた」というのが挙げられるでしょう。

 業績獲得がうまくいくかどうかの決定権が顧客側にあり、自社でコントロールできないため、外部要因に左右されてしまう。場当たり的なマネジメントになりがちで、そのスタイルが「急きょ業績を追いかけることになり打ち手が後回しになる」という状態を作り出しています。

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「わが社のプロジェクトX」は一朝一夕にしてならず、とは間違いないのだろうが、それこそ失敗の数だけ理由があるというのも真実のようだ。

菊池明光(きくち・あきみつ)
1978年埼玉県生まれ。早大政経学部を卒業後、(株)リクルートに入社。13年間の勤務ののち退社、ベンチャー2社を経て、2016年に(株)可視化を創業。超有名企業から中小企業まで「営業ノウハウ可視化」のコンサルティングを行ってきた。『とにかく可視化 仕事と会社を変えるノウハウ』が初の著書となる。

デイリー新潮編集部

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