ルフィの闇バイトに参加して「懲役10年」を言い渡された男が法廷で語った後悔 親ガチャに敗れ「1万円を握りしめて一人上京」「最後は電気・水道も止められ…」

国内 社会

  • ブックマーク

家族について問われると号泣しだした和野

 失業保険をもらうために会社に離職票を書いて欲しいと頼んでも、辞めた人間にかける義理はないと断られて行き詰まり、いつしか友人から借りた借金は50万円を超えてしまった。最後は電気・水道まで止められてしまい、闇バイトを検索してしまったという。

 和野が泣き崩れたのは、弁護人から「なぜ家族に救いを求めなかったのか」と問いかけられた時だった。

「家族に憧れる気持ちはずっとあったのですが、もう2度と裏切られたくないという思いがあった…」

 10年ほど前、東京で職を点々としていた頃、特殊詐欺に巻き込まれて逮捕された時、母親に連絡を取ったものの返事がなかった苦い思い出があった。

 闇バイトに応募してはしまったが、「タタキが強盗を意味する言葉だとは知らなかった」「人を傷つける仕事をするつもりは最初からなかった」、「キムには免許証など個人情報を提出しており、裏切り者は腕を切り落とすと脅されていた」と脅迫があったため逃げられなくなり、やむなく事件に加わってしまったと語った。

いつかイギリスに行ってみたい

 拘置所の中で己の行動を後悔し、反省する気持ちをノートに綴って、被害者へも謝罪の手紙を書いてすでに弁護人に預けている、罪を償った後は働いて弁済していくつもりとも語った。

 そして弁済が晴れて終わり、自由の身になった暁に挑戦したい夢をこう語った。

「パスポートを取って、英語を勉強し、自分が好きだったファンタジーの世界の舞台であるイギリスの街に行ってみたい」

 弁護側は和野の親友を証人として呼んだ。親友は法廷に入る時、和野の肩を強く叩き、励ましてから証言台に立ち、

「被告人は元々正義感の強い人間だった」

 と和野を庇った。そして、「被告人は一生の友達だから、罪を償って出てきたら住まいや仕事の面倒を見るつもりです」と身寄りのない親友の再起を支えていくと決意を語った。

 その間、和野は肩をわなわな震わせながらずっと泣いていた。

 検察側は論告で「周到に計画され、匿名性が高く、組織された集団による危険な犯行だった」「被告人は最後まで現場に残り、現金の奪取に力を及ぼしていた」として懲役13年を求刑。

 弁護側は最終弁論で「事件を主導したのはすべてキムで被告人は生活に行き詰まり、選択肢を奪われ、最後はキムと永田に脅されて関与したに過ぎない」「反省し未来への希望を語り出した和野に再起のチャンスを与えるべき」だとして、長期の懲役刑は避けるよう訴えた。

 5月31日、裁判員によって下された判決は懲役10年の実刑判決だった。(文中、呼称略)

前編【ルフィに操られて強盗に加わり最後は”置き去りにされた男”に「懲役10年」 男はなぜ闇バイトに手を出したのか】を読む

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。