ルフィに操られて強盗に加わり最後は”置き去りにされた男”に「懲役10年」 男はなぜ闇バイトに手を出したのか

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スピーカーモードで車中に流れたキムからの「指示」

 12月5日午前9時過ぎ。和野はキムから指示を受け、集合場所のJR高円寺駅前に向かった。指定されたワゴン車にはキムたちが集めた闇バイトが6人集まっていた。秦野市の空き巣事件を共に起こした永田と運転手役もいた。

 全員が集まった後、キムはチームリーダーとなった永田の携帯電話をスピーカーモードにさせてメンバーにこう伝えた。

「全員でこれから行く家にいる男を殴ってください。殴らない人には報酬は払いません」

 そこで和野はこの日の仕事が宅配業者に扮して住人を集団で襲う “タタキ”であると初めて知らされた。その後、7人のうち2人は怖くなって逃げ出したが、和野は永田らと一緒に最後まで犯行に加わった。2度男性を殴って「カネはどこだ」と脅迫もした。

 そして逃走しようと仲間と一緒に待機していたバンに乗り込んだものの、車が急発進した弾みで転落。仲間に見捨てられて逮捕されたのだった。

証言台に立った和野や永田が語ったこと

 第2回公判では、永田が検察側証人として証言台に立った。スウェット越しでもはっきりとわかる筋骨隆々とした体躯や鋭い眼光はいかにもコワモテで、おとなしそうな和野との違いを引き立たせた。

 永田は検察官の質問に答えながら、競輪にはまって多額の借金を抱えていたことがきっかけで、和野と同様、闇バイトサイトを検索し、キムと知り合い、空き巣事件の2日前に事件に加わるようリクルートされ、金沢から上京したと語った。

 キムを介して和野の自宅に泊めてもらった時は、「初対面のわりにわきあいあいと話しました」。空き巣に成功後、永田の方からの頼みで和野を誘って、一緒に赤レンガ倉庫を訪れるなど横浜観光をしていたことも明かした。

 一方で、和野が被害者を殴っている場面にも出くわした時は「覇気や威圧感のない雰囲気だった」と語り、和野がいやいやな様子で犯行に加わっていたとも証言した。

 和野はなぜルフィらにいいように操られ、凶悪な男と手を組み、取り返しのつかない犯罪に手を染めてしまったのか。

 被告人質問に立った和野は「自分の情けない人生の結果だと思っています」と語り出した。

 後編では“親ガチャ”に敗れ、岩手県の貧しい母子家庭で育てられ、相次いで家族の裏切りに遭って単身上京するまでの子供時代。その後、職を転々としながら都会で暮らし続けてきたが、コロナ禍がきっかけで仕事が激減して無職になり、最後は電話・電気・水道・ガスが止まるほど生活が行き詰まり、闇バイトに手を出してしまった和野の悔恨の言葉を伝える。(文中、呼称略)

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