猛暑対策で「夏の甲子園」二部制導入へ 指導者からは「全試合を甲子園で行う必要はない」「京セラドームでやればいい」という声

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「そこまで暑さ対策するなら…」

 選手としても指導者としても、甲子園に出場経験がある指導者はこう話す。

「子どもの頃から当然、テレビで甲子園を見ていましたから、それを目指すというのは自然なものでした。出場した時はもちろん嬉しかったですし、独特の雰囲気があります。ただ、選手の時も今もそうですけど、やっている方は必死で、そこまで感慨に浸っているわけではないですからね。最近の選手はもっとドライで、“(甲子園が)思っていたよりも小さく感じました”っていう選手もいます。伝統がある大会を守ることはもちろん大事ですけど、全試合を甲子園で行う必要はないとも思いますし、暑さ対策とか選手への負担を考えるのであれば、日程とか大会のやり方も考える必要があるのかもしれませんね」

 極端な意見としたうえで「そこまで暑さ対策するなら京セラドームで大会をやった方が早くないですか?」という指導者もいた。もちろん「何が何でも今のやり方でやりたい」という意見もあるかもしれないが、現場の多くの指導者や選手がそこまで今のやり方にこだわっているわけではないだろう。

 昨年の夏の甲子園で優勝を果たした慶応の森林貴彦監督も、大会中の取材で以下のように話している。

「甲子園に出ても試合まで間があると1週間待って、1試合だけして負けたら帰るわけじゃないですか。例えば、負けたチーム同士でどこか球場を借りて裏トーナメントや裏リーグ戦をやっても良いのかなと。せっかく全国からいいチームが集まっているわけですから、そういう交流ができたらいいなあと思います」

午前中だけ高校野球、夜はプロ野球

 こういった意見や選手の健康面、さらに交流や成長を考えるのであれば、今の大会方式を見直すことも必要ではないだろうか。例えば、開会式と決勝戦など一部の試合を甲子園で涼しい時間帯に行い、会場を分散させるというのも一つの方法である。また、甲子園での開催にこだわるのであれば、阪神球団やNPBと協議して大会期間を延ばし、午前中だけ高校野球、夜はプロ野球という方法もあるのではないだろうか。

 冒頭で触れたように、近年多くの改革が行われていることは事実だが、現在の猛暑や現場の声を考えると、まだまだ検討すべきことは多いはずだ。これまでの伝統を守りつつ、より良いものにするために、さらなる議論を進めていくことを望みたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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