「AIスピーカーと同居」「ネット上に友達がたくさん」 89歳の世界最高齢プログラマーが伝授するシニア世代の「デジタル生活」 櫻井よしこ×若宮正子

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 ジャーナリストの櫻井よしこ氏による本誌(「週刊新潮」)連載が1100回の節目を迎えた。その記念対談にお招きしたのは、世界最高齢のプログラマー・若宮正子氏である。シニア世代が敬遠しがちな「デジタル生活」を喜々として実践する先駆者。その素顔に櫻井氏が迫る。

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櫻井 世界一の高齢化社会である日本で輝くような活躍をしておられる高齢者は少なくありません。若宮さんは中でも断トツの方。「世界最高齢のプログラマー」と称賛された若宮さんの生き方は、シニア世代の人たちの心を前向きにさせてくれます。

若宮 そこまで言っていただくなんて恐縮です。

櫻井 今日お召しのブラウス、とても素敵なお色柄ですけれど、ご自身がパソコンでデザインなさったそうですね。

若宮 ええ、マイクロソフトのエクセル(表計算ソフト)で表を方眼紙に見立てて作成しましたが、デザインするのは大して難しくありません。一番大変だったのは生地を縫ってくれた方でした。

櫻井 どういうことですか。

若宮 幾何学模様のようにつながっている柄なので、うまく縫わないとボタンホールなどでズレが生じてしまうんです。見た目がおかしくならないよう丁寧に仕立てていただきました。香川県に住む方にお願いしたのですが、生地のお店なども含めてネットでつながったご縁で生まれた服なんです。

「デジタルには苦手意識が」

櫻井 そうでしたか。とても上手にデジタルを使いこなしていらっしゃる! 実は今回、なぜ若宮さんに対談をお願いしたかと申しますと、私は「週刊新潮」に毎週コラムを書き始めて今年で22年になります。1100回を迎える節目で若宮さんとの対談を通して、シニア世代がデジタルに向き合う際のヒントを得たいと思っています。いまだに私は原稿用紙のマス目にペンで書くのを生業としています。デジタルには苦手意識がつきまといます。でも、若宮さんの著作で未来への希望が湧いてきました。ご本では、いつの時代も進歩に追いつくために苦労するのはシニア世代だと書いてらっしゃいます。まさに私の世代のことですが、新しいことにチャレンジするのに苦労は付き物。それが「人類普遍の摂理」なら、まだまだ屈しちゃダメだと思い直しました。

若宮 おっしゃる通りで、デジタルツールを活用するのには抵抗があっても、ちゃんと活用できれば日々の暮らしは劇的に変わっていきます。たとえば、昔だったら八百屋さんや魚屋さんに「今日のオススメは何ですか」なんて、おしゃべりができましたよね。

櫻井 今の時代、なかなかそうもいきません。

若宮 ええ、魚屋さんが「今日はブリが脂のってるよ」なんて教えてくれましたけど、商店街も寂しくなってしまいましたからね。その代わり、スマホを開けば瞬時に知りたい情報を得られますから。

櫻井 本当に。でも、ネット情報はたくさんあり過ぎて取捨選択が難しい。分からなくなる高齢者も多いでしょう?

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