棋聖戦第1局は藤井八冠の先勝 15年ぶりのタイトル戦復帰でファンが山崎八段に期待したこと

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「弱気になってしまった」と山崎

 これで思い出すのは2022年11月の竜王戦第5局での藤井だ。飲み物の入った瓶と栓抜きが出されたが、どうしても栓が抜けないため時計係に抜いてもらっていた。藤井が四苦八苦して栓抜きで格闘していたのが何ともほほえましかった。これは世代的に藤井が栓抜きの使い方を知らなかったことが原因だったようだが、「栓の抜き方も知らないんじゃ勝てるはずない」とは言わなかっただろう。

 対局後、藤井は「いいスタートを切ることができました。第2戦以降は先手後手が決まっているので、しっかり準備していこうと思います」と話した。5月31日に柏市で行われた叡王戦第4局でも伊藤匠七段(21)に勝つなど、千葉ではタイトル戦6戦全勝と相性がいい。

 山崎は「普段より踏み込まないとと思っていた。先手番なのでちょっと欲張ってみた。けど、藤井棋聖に柔らかくとがめられた。『7五歩(37手目)』と指したからには、受けずにカウンターで攻めるべきだった。予定と違う戦いになってちょっと弱気になってしまった。挑戦者としてよくなかった」などと話した。しきりに勇気がなかったことを後悔していた。

 第2局は6月17日、新潟県新潟市の「高志の宿 高島屋」で行われる。ここは開き直って山崎ワールドで若き王者を幻惑させてほしい。
(一部、敬称略)

粟野仁雄(あわの・まさお)
ジャーナリスト。1956年、兵庫県生まれ。大阪大学文学部を卒業。2001年まで共同通信記者。著書に『サハリンに残されて』(三一書房)、『警察の犯罪――鹿児島県警・志布志事件』(ワック)、『検察に、殺される』(ベスト新書)、『ルポ 原発難民』(潮出版社)、『アスベスト禍』(集英社新書)など。

デイリー新潮編集部

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