棋聖戦第1局は藤井八冠の先勝 15年ぶりのタイトル戦復帰でファンが山崎八段に期待したこと
将棋の棋聖戦五番勝負(主催・産経新聞社)の第1局が6日、千葉県木更津市の「龍宮城スパホテル三日月」で行われ、藤井聡太八冠(21)が挑戦者の山崎隆之八段(43)に先勝した。【粟野仁雄/ジャーナリスト】
【写真】15年ぶりにタイトル戦に挑戦した山崎隆之八段(43)
永世棋聖が目前に
藤井の初タイトルは17歳11カ月で渡辺明九段(40)から奪った棋聖だった。2020年7月の暑い夜、取材を終えて関西将棋会館(大阪市福島区)から出ようとしたところ、お祝いに駆け付けたファンらでみくちゃになったのが懐かしい。あれから早くも4年になる。
藤井はこのシリーズを防衛すれば5期目の棋聖となり、史上6人目となる永世棋聖の資格取得者となる。永世棋聖の条件は「通算5期」で「連続」の必要はない。それを初戴冠から負けなしで達成してしまうのか。
過去の達成者は、大山康晴(1923~1992)、中原誠(76)、米長邦雄(1943~2012)、羽生善治(53)、佐藤康光(54)と大棋士ばかり。いずれも名人経験者だ。そんな彼らとて、21歳での永世資格など考えられないだろう。
いまさら「最年少」とい言うのも陳腐だが、実際、「最年少永世」の称号が藤井の目の前に迫っているのだ。
ただし、1996年、タイトル七冠を独占していた羽生九段が三浦弘行九段(50)に敗れ、その一角を崩されたのも棋聖戦だ。さあ、どちらに出るか。
「山崎ワールド」
挑戦者の山崎は、2009年の王座戦以来、実に15年ぶりのタイトル戦だ。今回、棋聖戦トーナメントで、森内俊之九段(53)、渡辺明九段、永瀬拓矢九段(31)、そして決勝で佐藤天彦九段(36)を破って挑戦権を獲得した。
将棋ファンは「ついに山崎ワールドがタイトル戦で見られるか」と盛り上がっている。
山崎は「初手から何が飛び出すかわからない」というユニークな将棋で知られる。かつてNHK杯で広瀬章人九段(37)と対戦した際は、先手の1手目に歩を動かさず、「4八銀」とする手を見せたこともある。
また、パックマン戦法という後手の奇襲作戦では、4筋に飛車を回したあと、「4四歩」と指した歩を「ただ取り」にさせている間に飛車が成り込み、角を成り込ませて、最初から大乱戦にすることもあった。
AI(人工知能)研究が隆盛の今、セオリーにとらわれない人間らしい独自の将棋を指す山崎のファンは多い。陽気な冗談好きでもあり、今回も前夜祭では大いにファンを笑わせていた。
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