【ススキノ首切断】「私は娘の奴隷」異様過ぎる親子関係が構築された背景を専門家が分析 母親・浩子被告の偽らざる今の心境は
息子だけが暴力を振るった理由
ちなみにススキノの事件と東京湯島の事件は、父親が子供のあらゆる“命令”に従っていたという共通点がある。
湯島の事件で息子を殺害した父親は家庭内暴力の被害者だっただけでなく、衣服の買い物やビデオ録画など、様々な“雑用”を強制されていた。息子に服従することの是非を精神科医に問うと、「一つの技術と考えればいい」とアドバイスされ、息子の暴力や要求に耐え続けたという。
「暴君と化した子供が両親に君臨するという家族のあり方が社会的問題として認識されるようになったのは1980年代ぐらいからだと思います。人間は昔から親類縁者だけでなく、近隣住民の援助を得て子供を育てていました。ところが80年代ごろから日本各地で都市化が一気に進み、父母は血縁や地域社会と隔絶するようになったのです。つまり、子育てのトラブルは両親だけで解決する必要に迫られました」(同・池内さん)
池内さんによると、暴君と化して父母に君臨する子供の性別は、男性だけだった時代が長く続いたという。
「性別の偏りも時代を反映しています。戦前の家制度は戸主に絶対的な権力を与え、その大半は父親でした。出産して男児が生まれると両親や親類だけでなく、社会全体が『跡取りが生まれた』と認識し、大切にしました。そうした“男児優位の常識”が80年代まで残っていたのです。両親や親類だけでなく、ある意味で社会からも甘やかされて育った息子が、家庭内暴力で両親を支配するというケースだけが繰り返されてきたのです」(同・池内さん)
暴君を生む子育て方法
ところが近年、家庭内暴力を起こす子供の性差に変化が生じてきたという。ススキノの事件で明らかになったように、娘も暴君と化し、父母に君臨するケースが増加しているのだ。
「戦前の家制度などの記憶が日本人から完全に忘れ去られ、代わりにジェンダーレス社会が浸透したのが原因でしょう。80年代や90年代までは、『女の子は女の子らしくしなさい。暴力なんてもってのほかです』という社会的圧力が良くも悪くも機能していました。不当な性差別をなくすことで得られた社会的メリットはたくさんありますが、残念なことに暴力を振るって両親を支配する娘も増えてしまったのです」(同・池内さん)
どういう子育てをすると、両親を暴力で支配するような子供が誕生してしまうのか。池内さんは「修被告と浩子被告の子育てを把握していませんので、あくまで一般論になりますが、大別すると2タイプの子育てが挙げられます」と言う。
「1つ目は、精神的なものも含めて子供を虐待し続けた場合です。親が子供を幼児の頃から虐待するうちに、子供が成長して体格が大きくなると力関係が逆転します。ある日突然、子供は反撃を開始し、これまで虐待されてきた親を虐待するようになります。被害者と加害者が入れ替わるのが1つ目のタイプの特徴です。2つ目のタイプは、親が子供に“育てづらさ”を感じている場合です。理由は精神的な疾患など、様々なケースがあり、両親は『うちの子は、他の子と何かが違う』という違和感を常に抱えています」(同・池内さん)
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