「ムダ・ダメ会議」がこの世からなくならない理由と解決策とは

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人生=会議

 会議への不満を感じたことがある人は多い。「招集されたから出席したが、何のためのものかわからなかった」「特定の人が延々と自説を述べるだけ。しかも大した話ではない」「誰が進行して、誰が結論を決めるのかがわからない。だからいつも“続きは今度”となる」

「配布したペーパーや、モニター上のパワポを朗読する時間が異常に長い」――。こうした不満を一切抱いたことがないのは、極めて幸運な方か、あるいは自らが人々のストレス源になっているかのいずれかだろう。

『とにかく可視化 仕事と会社を変えるノウハウ』を上梓したばかりの経営コンサルタントの菊池明光さんは、誰もが知る有名企業から中小企業まで幅広い顧客とやり取りしてきた経験から、多くの企業が共通して抱えている悩みが「ムダな会議・ビジネス上のやり取りが本当に多い」ということだと指摘する。誰もがおぼえがあるにもかかわらず、なかなかなくならないのはなぜか。菊池さん自身が解説する(以下、同書をもとに再構成)。

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 会議やビジネス上のやり取りでリアルタイムに会話をする場面は、労働時間の多くを占めます。人によっては労働時間の50~90%にものぼるとも言われていますね。人生=会議などと形容されるゆえんでもあります。

 営業コンサルティングの仕事をしている筆者が日々接する多くの社長や営業本部長を担う役員の皆さんは、当然のことながら「営業組織の業績をあげたい」と思っているのですが、「それなりに手を打ってきたものの効果が出ない」と頭を悩ませるケースがことのほか多いのです。

相談や議論、ディスカッションの生産性が低い

 有名企業や「優秀な営業がたくさんいる、営業が得意な“営業強者”」と言われる企業ですらそうなのです。そこでその原因を追いかけていくと……「ムダな会議・ビジネス上のやり取りが本当に多い」ことに行き当たります。

 さらにそういった「ムダな場」の中身を詰めていくと、アジェンダ(議題)が設定されていない、ゴールが設定されていない、必要なメンバーがアサイン(割り当て)されていない、会議中の話者が限られる、影響力を持つ人だけが話をして物事が決まっていく……、報告なのか相談の連絡なのかわからない(そもそも報告や連絡を会議にする意味もないし、相談や議論、ディスカッションだけを会議にすればよいのですが)……といった点が浮かび上がってきます。

 さらに相談や議論、ディスカッションの生産性が低いこともまた非常に問題だなと感じます。なぜ低いのでしょうか?

 それは、「誰が何を言ったのか耳だけで記憶しながら思考を巡らせて、会議をするから」――。喋っていると、会議をしている本人たちは仕事をした気になってしまうものなのですね。

会議をどう進めていいかわからない

 こういった点を解決してくれるのが、「眼前可視化」というノウハウになります。会議などの席でリアルタイムに目の前で議事録を書きながら「議論を可視化しつつ会議を進行する」という極めてシンプルな方法で、これにより議論を深め、蓄積していくことを目的としています。

 このノウハウを採用してくれている、ある社のキーマンからはこんな評価をもらっています。

「眼前可視化の一番のメリットは結局、『共通言語化できる』こと。可視化されていないと組織課題みたいなことについてもどういうふうに話していいのか、どういうパターンがあるのかがわからないのです。当社の場合、抽象的な議論を可視化することが多く、抽象的な情報は耳よりも目で見る方が理解できる場面もあります。『あ、これならできそう!』というところまで可視化することで共通認識を持つことができます」

 最近、このキーマンは顧客から、「会議をどう進めていいかわからない」と相談されることが多くあるとも言います。実際に会議録音を聞いてみたようですが、それだけでは太刀打ちできず。一方、文字起こしをしてみたら、具体・抽象の区別が一気に進んだと言っていました。

「言った・言わない」が非常に少なくなり

 キーマンの言葉を続けましょう。

「大事なことは、一旦聞いたままを書いてみること。自分でかみくだいて文字にすること。理解できていないのに自分で編集して書いてしまうのはダメですね。聞いた通りに相手の言った通りに可視化することで、理解が深まります。わかっていないと思うなら、言われたまま書いてみるのが大事。営業でも企画でも、話がわからないという場面があれば、そのまま書いてみようとアドバイスしたいです」

 ところで、そもそもの話ですが、会議の議事録などをその場で参加者・顧客とリアルタイムに共有=「見せながら」議論している人はどれくらいいますか? おそらくほとんどいないのではないでしょうか。

 政治家の言葉が支離滅裂だと指摘され、笑いの種にされることがままありますが、あれを笑っていられる人は実はそう多くないのです。多くの企業の経営層の皆さんと会話をしてきた中で、彼らの話したことを目の前でその通りに書いていくと、いかに言葉の定義が曖昧であるのか、論理が破綻しているのか、目的や手段が混在しているのか、同じことの繰り返しなのか、などの欠点・歪み・ノイズに気付くことが少なくありません。

 これに対し、眼前で議事録を可視化すると経営層の方たちは自分が何を言っているのかを正しく理解できます。そしてそれを踏まえて次の展開へと思考を進めることができ、議論の生産性が飛躍的に向上します。「言った・言わない」が非常に少なくなり、議論が巻き戻ることも少なくなり、巻き戻すとしてもどこに戻るべきか瞬時に判断可能となり、これも議論の生産性向上に寄与します。

菊池明光(きくち・あきみつ)
1978年埼玉県生まれ。早大政経学部を卒業後、(株)リクルートに入社。13年間の勤務ののち退社、ベンチャー2社を経て、2016年に(株)可視化を創業。超有名企業から中小企業まで「営業ノウハウ可視化」のコンサルティングを行ってきた。『とにかく可視化 仕事と会社を変えるノウハウ』が初の著書となる。

デイリー新潮編集部

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